2017年12月-情勢を一変させた外交布石

情勢を一変させた外交布石

「布石を打つ」。囲碁で局面全体を見据えて石を打つことだが、転じて「将来を見越してあらかじめ手段を講じる」意味で使われる。トランプ米大統領の10日間のアジア初歴訪を前に、北京が打った布石は「外交の見本」のように見事だった。
 歴訪のトップは日本。大統領専用機は羽田ではなく、なんと米軍横田空軍基地に着陸した。まるで「宗主国のキング」の振る舞いだが、その足で安倍首相と一緒にゴルフへ。「あんたはほんとに日本の首相か?」と、腕前をほめられた首相は、バンカーに足をとられもんどりを打つ始末(写真)。夜は大好物のステーキと、ほとんど「物見遊山」だった。
 日米首脳会談は35分で終わり、通訳時間を除けば実質的にはその半分。記者会見で大統領は、米国兵器を追加購入すれば、雇用拡大と日本の安全保障の強化になるとぶち上げた。これに対し首相は一機150億円超の戦闘機名まで出して「丸のみ」するイエスマンぶりを発揮した。北朝鮮問題より貿易不均衡を優先したトランプの本音の表れだった。
 本題に入ろう。北京が打った布石とは中韓両国が10月31日、米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)で悪化した関係の改善で合意したことを指す。北京とソウルの二国間合意にすぎないように見えるが、違う。中韓に加え北朝鮮と米国、それに日本の多国間関係を揺さぶる波及効果を計算に入れている。
 北京はTHAAD配備を、中国を射程に入れていると強硬に反対し、韓国への観光ボイコットやスーパー閉店などの報復をした。しかし今回、ソウルから「第三国を狙ったものではない」「追加配備しない」という言質を引き出して大幅譲歩した。その結果、北京からみれば北朝鮮問題で、米国が期待する「米日韓三国同盟」にくさびを打ち込む成果が挙がった。
 文在寅大統領は「日米韓の軍事協力は同盟に発展しない」と述べ、米原子力空母3隻の合同演習でも、日韓合同演習は拒否。日米の新外交戦略「自由で開かれたインド太平洋戦略」にも慎重だ。一方ソウルから見れば、対中関係の悪化で失った経済損失を回復するチャンス。
 日米にはマイナスばかりのように映るが、東京にとっては損ばかりではない。中韓関係悪化で足踏みしてきた日中韓三国首脳会談(東京)の実現に弾みがつく副次効果をもたらしたし、中断してきた日中首脳の相互訪問も現実味を帯びてきた。まさにウィンウィン外交だ。
 この布石によって、武力行使を含む日米の圧力路線は後退し、中韓ロの対話による平和解決路線に基調が変わりつつある。「日米蜜月」とはしゃいでばかりいないで、全局を見据えたこの外交から学ぶことは多いはずだ。(了)

オットット爺や

2017/11/29 | カテゴリー:オットット爺やのつぶやき

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