2019年10月-制裁緩和待つ中朝国境の街

制裁緩和待つ中朝国境の街

 「おーい、釣れるかい?」と声をかければ、返事が返ってきそうな距離で、木造小舟に乗って川魚を獲る2人の漁民。約200メートル先の対岸では、3人の女性がおしゃべりしながら川で洗濯している。中国と北朝鮮の国境を流れる鴨緑江。中国側の遼寧省丹東市で遊覧船に乗ると、対岸の北朝鮮・新義州は目と鼻の先だ。
トランプ米大統領と金正恩・労働党委員長の歴史的な米朝首脳会談から1年余り。北朝鮮は核・ミサイル開発の「先軍政治」を止め、経済建設へと路線転換した。しかし国連安保理による2年前の対北朝鮮制裁は残り、人道支援や観光を除き外国の投資や経済協力はストップしたまま。
北朝鮮にとって隣国の中国は、対外貿易の約9割を占める経済の命脈であり、約7割の物品は丹東経由で輸送される。しかし制裁の影響で昨年の中朝貿易は半減した。「100年来の自然災害で1100万人に影響が出る」という韓国側の推計もある。
丹東の観光名所は、両国をつなぐ全長1キロの「鴨緑江断橋」。なぜ「断橋」と呼ぶのか。それは1950年、朝鮮戦争中に米軍のB29の空爆で、北朝鮮側部分だけが破壊され、橋を通じた中朝間の往来が断たれたからである。橋はもともと、朝鮮を植民地支配していた日本の総督府が1911年に完工した。
9月の新学期直前だったせいか、遊歩道になっている橋は家族連れの観光客でにぎわっていた。中国人は対岸の新義州への日帰り観光旅行が認められ、結構な人気だという。費用は一人800人民元(約1万3000円)。豊かになった中国庶民にとっては高くはない。
北朝鮮観光が人気なのは、50歳以上の中国人にとってある種の「郷愁」を味わえるからだという。「政治闘争に明け暮れ、貧しかった文化大革命時代の自分の姿と、現在の北朝鮮を重ね合わせられる」とある観光客は話す。
鴨緑江には、川の中洲の経済開発区や新しい橋が完成したが、制裁継続で全く利用されていない。金委員長が6月末、この経済開発区を視察したと報じられると、丹東の不動産価格は一気に上昇したという。中朝とも制裁緩和を「今か今か」と待ち望んでいる。
対岸を見晴らす中国側岸壁に、鴨緑江の川魚や鴨料理を出すレストランがあった。屋根の上には北朝鮮、中国、韓国、ロシア四か国の国旗がはためく。韓国とロシアの観光客を意識した店の配慮だろう。店の名前は「海鮮聯盟」。「聯盟」には中国で「同盟」の意味もある。東アジアの「4か国同盟」。米日vs4か国。なんとなく今の東アジアの政治地図を表すような取り合わせだった。もちろん、勝手な思い込みに過ぎないのだが。(了)

オットット爺や

2019/10/01 | カテゴリー:オットット爺やのつぶやき

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