2019年2月-「ダンナさん」追究

「ダンナさん」追究

 急いで横断歩道を渡ろうとしたら「ピーッ」という鋭い警笛音と「そこのダンナさん、信号赤ですよ!」と、スピーカーから女性の声。顔を上げると道路の向かい側の警官がこちらを睨んでいる。しばらく耳から離れなかったのが「ダンナさん」の五文字。そうかオレって、ダンナさんだったのか…。
ところがある家電量販店では「おとうさんが欲しいのはこれですよね」と、店員から言われた。口をつきそうになった「オレ、あなたの父親じゃないけど…」という言葉を思わず飲み込んだ。TVの街歩き番組で、タレントが初対面の通行人に「おとうさん」「おかあさん」と呼びかけるのが伝染したのか。客との距離感を縮めるための"善意"かもしれないけれど、「お客さん」の方が誤解を招かない呼びかけだと思う。
それに比べると「ダンナさん」は、なんとも距離感のつかめない不思議な語感がある。旅館などで客に使う「旦那さま」でもなければ、押し売りや物乞いの「ダンナ」でもない。しかもそれが、女性警官から発せられた言葉だけに意外感がある。いったいオレって何者なんだ、と考えさせてくれた一言。
こんな話を「年末のご挨拶」としてメールで知人に送ったら、すぐ様々な反応が戻ってきた。外国人を含めその一部を紹介しよう。
「これが日本人のお気遣い。私も買い物の時、よく"お姉さん"と呼ばれます。若く見られたい気持ちが当然あるから、最初はちょっと不満でした。おばあさんになったら"おばあさん"と呼ばれたくないですので、お母さんの方がいいかな」(30代 駐日中国特派員)
「何がお父さんだ。旦那という言葉の意味を知っているのか、などなど。言いたくなります」(70代 元ジャカルタ特派員)
「交通違反で止められたときも"運転手さん"とか"だんなさん"と言われますよ。警察官はできるだけニュートラルな呼び掛けを考え、そこらへんに落ち着かせているんでしょうね」(60代 元ニューヨーク特派員)
「 "お父さん"と呼びかけられたら僕は別に気にしなく"お祖父さん"よりまだましです」(70代 ロシア人国際政治学者)
「中高生時代に何度か"奥さん"とか呼びかけられたことがありました。当時の服装からして、確かに毛玉のついたようなカーディガンを羽織ったりしていて、所帯じみていたからか」(40歳 大学哲学教員)
「日本語って難しいですね。何と呼ばれているのか、どんな距離感でその呼び方をしていたのか、今度注意してみたいと思います」(50代 駐日台湾特派員)
風体を見て、年齢から身分、職業までを瞬時に判断し、呼びかける言葉を選ぶ─。不快感を与えぬようという気遣いも、時には裏目に出る。日本語って本当に難しい。(了)

オットット爺や

2019/02/07 | カテゴリー:オットット爺やのつぶやき

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