2010年12月-生態学の基礎、幕末維新の実像、西洋オカルト史

×月某日 

 先月に体調を崩して始めた禁煙は、結局1週間しか続かなかった。人類の遺伝子に対する未来への悪

影響は、私の子供たちは吸わないから、私がこの世からいなくなれば済む話だし、私が排出する二酸化炭素の生態系に与える影響も、環境はそこに住む生物がお互いに影響しあって全体的に成り立つから、私個人の影響力なんて微々たるものだ。

 最近物故した、有名な文化人類学者の梅棹忠夫氏と生態学者の吉良竜夫氏の両者が編集した『生態学入門』(講談社学術文庫)は、学問としての生態学の基礎知識や研究の流れを概観してまとめた本で、一般読者にとって読み易いとはいえないが、薄い文庫本なので通読すると、地球全体の生態系のダイナミックさがある程度理解できる。地球上の全生物が、地形も気候も違う環境で、お互いに居住域を棲み分けながら全体的なバランスを取って暮らしていることを、著者らの師だった今西錦司氏の学説を拠り所にして説明してくれる。 

×月某日

 サバ州に来る観光客は韓国人が第一位で、次に中国人やオーストラリア人が多い。中国人観光客の柄の悪さは、こちらでも同様に評判が悪いが、40年ほど前の日本の農協ツアーもひどかった。それにしても、最近の尖閣列島での船長拘束事件で示された、中国漁船や中国政府の対応は、隆盛期にある国の自信と裏腹の傲慢さを如実に示していた。

 日本も昔はこういう傲慢な態度を近隣諸国に対して取っていた。私はあの戦争において日本悪者論には組しないが、同時に賛美もしない。それにしても、今回の民主党政府の腰砕けな対応には失望した。幕末から明治維新にかけて英国公使館の通訳官として活躍したアーネスト・サトウの『一外交官の見た明治維新』(岩波文庫)で活写されている、幕末期に日本国を欧米列強の歯牙から守り、立派な国を作り上げようと命懸けで働いた先達の偉業を台無しにするものだ。言っては悪いが、民主党政権の指導部は、若い頃に親や教師や国に楯突いた全共闘世代だが、彼らには日本国や日本民族に対する愛着が薄いのだろう。 

×月某日 

 サバ州でも西マレーシアでも、他の東南アジア諸国でも、奥地の農村では未だに心霊治療が盛んである。病院へのアクセスが悪く、治療代も払えない貧しい農民は、伝統的な治療に頼るほかはないのだ。そういう精神風土だから、滅多に読書をしないこちらの人たちでも読む本やウェブサイトでは、オカルト物が根強い人気を保っている。

 今では東南アジアのオカルトにも、西洋由来のオカルトの影響が強く見られるが、そのいかがわしさは、西洋オカルトの集成版とも言える長編小説である、記号論哲学者ウンベルト・エーコの『フーコーの振り子』(文藝春秋社)を読むとよくわかる。十字軍参戦を契機に、現在の国際金融体制の基礎作ったテンプル騎士団を中心に、ヘルメス学、カバラ、グノーシス、錬金術、交霊術など、数多くの西洋オカルト学派の発生の経緯と系統が述べられていて、ある程度の知識がないと読み通すのは大変だが、非常に啓発的な本である。

三好良一

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