2010年6月-19世紀の東南アジア、呪術師、日本政治の黒幕

×月某日

 先月奥地での、それぞれ1週間の2回の植林のうち、最初の植林期間中は今年初めからの旱魃で雨が一滴も降らなかったが、2回目のある日、植林を終えて村に帰った途端にスコールとなり、参加者の男子高校生たちが、マッド・スライディングではしゃいでいた。私も若い頃はスコールの時には、石鹸を持って即席シャワーを浴びていた。 

 東南アジアのスコールで大変な苦労をしたのが、19世紀の航海者たちで、そのうちの一人で、ルネオ島とスラウェシ島、それにバリ島とロンボック島の間に、ユーラシア区とオーストラリア区という動物分布の境界線ウォーレス線に名前を残し、ダーウィンと同時期に進化論を唱えたアルフレッド・ウォーレスの『マレー諸島』(ちくま学芸文庫)では、蒸気船登場以前の航海の困難さが偲ばれる。鳥や昆虫についての記述は理解不能だが、当時の東南アジア島嶼部の自然や民族文化が、映画を観るように活写されている。 

×月某日

 今年の一連の植林のうちの最初のシリーズを終えて、長らく旱魃だったサバ州にも雨が降り、し気分が落ち着いたので、現実世界の葛藤から離れて、ニューエイジ系の本を読もう。ただし、UFOや臨死体験、自分探しみたいな軽い内容のものではなく、人間の現実認識を超えた世界の存在についての、哲学的で思惟的で深遠な、重たい内容の本がいい。

 そこで、長年読みたかったニューエイジ運動の重要な古典の一つ、カルロス・カスタネダ『呪術師と私』(二見書房)に取り掛かる。内容は、1961〜65年にかけて、美黒人の人類学者が、ドン・ファンというメキシコの呪術師に入門して教えられた内容を、西洋文明の言葉と概念で説明しているのだ、一度の読書では消化できそうにない。数種類の幻覚植物を摂取して体験できる、現実世界を超えた状態に関する知覚や認識は、今では文化の強制によって各人の無意識に閉じ込められているが、今後の人類が物質的な破局を超えて、精神的な高みに達するためには、その秘められた知恵の再発見が重要になるだろう。

×月日

 タイ王国でのデモがダラダラと続いているうち、中央アジアのキルギスタンでは、5年前と全く同じように、数日間のデモだけであっという間に政変が起きた。コタ・キナバルでは1985年の政変以来デモは起きていないが、日本でも激しいデモは無くなった。

 私が5歳のときの1960年(昭和35)年には、日米安保条約反対と記し内閣妥当のデモが激しく、主導していた全学連の名は世界的に知れ渡った。その時期、全学連に活動資金を提供していたのが、戦前派共産党委員長で、獄中転向して戦後は右翼の黒幕とされた田中清玄(せいげん)だっと。『田中清玄自伝』(ちくま文庫)を読み、振幅が大きくて複雑に見える彼の行動ながらも、左右両翼の論理と心情が理解できる私には、よく納得できた。特に、1973(昭和48)年の石油危機の際、インドネシアから石油輸入を実現させて、日本のエネルギー資源の調達先を、極度の中東依存状態から多極化させた功績は大きい。

三好良一

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