2012年1月−最も寒かった戦争、地名にこめられた歴史、クリーン政治家の実相

X月某日

 元々冬の寒さが大嫌いな私は、28年前にサバ州に来てから快適に過ごしているが、最近観た昔の映画「卒業」の、サイモンとガーファンクルの「スカボロー・フェア」が流れるなかの秋の大学構内の場面に、落葉の季節もいいなと思った。私の好きな柿、梨、栗などはすべて秋の果物で、京都で新聞配達をしていた大学1年の頃、よく柿泥棒をしていたものだ。 

 ともあれ、寒過ぎるのはよくない。「ベスト・アンド・ブライテスト」でピューリッツアー賞を受けたデイヴィッド・ハルバースタムの遺作『ザ・コールデスト・ウインター朝鮮戦争』(文藝春秋)に描かれる、1950年から1953年のソ連書記長スターリンの死まで続いた朝鮮戦争で、北朝鮮と中国の国境地帯の寒さで米軍兵士が辛酸をなめる場面は、各段階の戦争の残虐さと同じくらい衝撃的だ。朝鮮戦争は、ヴェトナム戦争以前に米国が勝てなかった初めての戦争で、米国では「忘れられた戦争」だが、現在の北朝鮮問題の根源であり、また日本が戦争特需で戦後復興の足がかりとなった戦争として、忘れてはいけない。

X月某日 

 コタ・キナバルの原義は「キナバル山が見える町」であり、日本によくある、富士山が見える場所、つまり「富士見」という地名のようなものだ。クアラ・ルンプールは「泥(ルンプール)の三角州(クアラ)」、クランタンのコタ・バルは「新しい(バル)町」であり、地名にはそれぞれの意味や由来があるので、薄っぺらで空疎かつ強引な改名には反対だ。

 谷川健一『日本の地名』(岩波新書)は、日本各地の地名の由来を、地形、海流、気候、産物、生業、神話、伝承、古語、アイヌ語、琉球方言、古代朝鮮語等の要素から解き明かした啓発的な本だ。四国の徳島県(阿波=あわ)と千葉県の房総半島(安房=あわ)の間、それに、古代王権の移動を物語る、北九州と大和の間の共通地名の多さはよく知られている。また、水銀などの鉱物が豊富な中央構造線(長野・諏訪→三河・渥美半島→伊勢・志摩→紀伊半島・吉野川→紀ノ川→徳島・吉野川→佐田岬→大分・佐賀関→熊本・八代を通る断層)沿いに共通地名が多く、南北朝時代の南朝側の連絡通路だったという説は面白い。

X月某日

 先の戦争でサバ州に駐留していた日本軍兵士には愛知県出身者が多く、戦跡参拝で知り合った元兵士は、青年育成外目的の「中日子ども会」代表で、90歳を超える今も、母とこの創作遊びの講習で日本全国を回っているが、彼の生徒の一人が、海部俊樹元首相だった。

 その海部俊樹の『政治とカネ』(新潮新書)という回想録では、彼が属した、清廉・潔白とされた三木元首相の派閥でも裏金を使っていたことが述べてるが、当たり前の話だ。1975年、彼が三木内閣の官房長官の時、「スト権スト」で日本国中を8日間混乱させた総評(日本労働組合総評議会)の富塚三夫事務局長とテレビで討論して、完膚なきまでに相手を論破したのを観て、敵ながらあっぱれと舌を巻いたものだ。私も後に20代前半の時、京都と東京で別々の機会に2回、同じ大きな宗教団体の信者10人に囲まれ、夕方から朝まで入信を迫られて議論し、2回とも論破した。当時、海部氏と議論していたら、勝っていたかも?

三好良一

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