2012年11月−温暖化?寒冷化?子供のもつ生前の記憶、ウラン・バートルの町の建設者

月某日

京都議定書に基づくCDM事業、つまり途上国での二酸化炭素の排出を削減する技術を支援すれば、計算される削減量を支援国の削減量としてカウントされる制度により、二酸化炭素を排出しない水力発電事業をサバ州で実施している日本企業を、数年前の事業開始以来手伝っている。国連CDM理事会から、削減実績の承認を得る手続きが複雑で大変だ。

地球温暖化が声高く言われ出したのは、1992年のリオ・デ・ジャネイロでの国連環境会議以降だが、その20年前の1972年に出版された、気候学者で雪氷学専攻の樋口敬二「地球からの発想」(朝日文庫)から、当時は寒冷化の方が懸念されていたことがわかる。当時は大阪万博や田中角栄「日本列島改造論」等を通じて、科学技術による自然大改造論がもてはやされ、今とは隔世の感がある。新潟の豪雪を減らすためにヒマラヤ山脈を削ったり、北極圏の温暖化のために、南極と南米大陸の間に氷山でダムを築き、欧州を温暖化しているメキシコ湾流を北極海に流入させるなどの破天荒なプランが大真面目に論じられていた。

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私の妻はサバ州の最大多数民族のカダザン族で、圧倒的多数はカトリックながら、弥生時代以降の日本と同じ根源をもつ文化や伝統、習俗を保持していて、毎年ではないが、彼岸の日に一族で集まって先祖の墓詣でもする。今年はやるのかどうか、まだ聞いていない。

こういう習俗は、死後の霊魂の存在を前提としているが、臨死体験や死後の世界との通信や、特に子供による前世の記憶の話は多い。いんやくりお(印鑰理生)「自分をえらんで生まれてきたよ」(サンマーク出版)は、生まれつき心臓や肺などに多くの重病を抱えて何度も大手術を受けてきた9歳の子供が、生まれる前の世界について幼少の頃から語ってきた内容を、母親がメモして絵本風の可愛い装丁にした、女性が好みそうな本だ。重病を抱えているのは、その経験を通じて人生の幸福について学ぶためであり、敢えてそんな人生を選んで生まれてきたのだと、子供とは思えないニューエイジ的な内容を語っている。

X月某日

コタ・キナバル国際空港のすぐ近くのタンジュン・アル海岸には五つ星のリゾート・ホテルがあり、砂浜沿いには英女王の夫君の名前を冠した「プリンス・フィリップ公園」もある。その公園こそ、第二次世界大戦で日本が降伏した後に、在留邦人や軍人・兵士約四千人が約半年間収容されていた強制収容所跡なのだが、今は現地人にも知る人は少ない。

現在、大相撲で活躍しているモンゴル人力士には首都のウラン・バートル出身もいるが、この町の多くの建物が日本軍捕虜によって建設されたことは知られていない。捕虜としてその建設作業に従事した体験を綴った、胡桃沢耕史「黒パン俘虜記」(文春文庫)は、「翔んでる警視正」などの軽い小説で知られていた作者によるはじめての私小説で、1983年に直木賞を受賞した。時には零下40℃にもなる酷寒のなかでの重労働、醜悪な食べ物の取り合い、腕力が物をいう暴力支配、生き延びんがために他人を蹴落とす狡猾で非情な駆け引き、陰惨な制裁など、極限状況のなかで顕わになった人間の本性を描いた、ひたすら暗い小説だ。

三好良一

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