2012年5月−時空間の壁抜け、共産主義の原典・原点・減点、大人になりきれない地球人

X月某日

 私はサバ州で農業指導、有機農産物販売(大失敗だった)などの農業、植林を通しての林業の仕事を手掛けてきたが、今度は水産業も手掛けるかもしれない。サバ州の漁民は一生海産物ばかり食って飽きないようだが、私は幼い頃、魚が安い長崎の貧乏家庭で海産物ばかり食わされて、今は魚以外の海産物(蝦・烏賊・蛸・蟹・貝)は、匂いだけでも嫌だ。

 私は海産物は嫌いだが、海岸の光景は好きだ。村上春樹『海辺のカフカ』(新潮社)は、海辺に座る少年の絵と、チェコ語で烏(からす)を意味し、「変身」で有名な作家の名前の「カフカ」をもじった題名で、この世からのはぐれ烏を自覚する少年が、数十年に描かれた絵の少年と時空間を超越して一体となり、自分の原点を見つけるという話だ。彼の作品に必ずと言っていいほど出てくる、顕在意識と無意識の間の行き来を意味する「壁抜け」のモチーフもしっかり出てくる。彼が有名になった『ノルウェイの森』はよくわからなかったが、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』は素晴らしい物語だと思う。

X月某日 

 コーヒーの世界で、アラビカ種やロブスタ種に押され、世界的に希少となったリベリカ種の栽培をサバ州で始めようとする知人は、10年ほど前に、私が主宰していた所属NGOのホームページの掲示板に投稿してきてから親しくなった北海道の現役農家で、私の影響で、後にJICA農業専門家としてウルグアイに行き、コーヒー・ビジネスの世界を知った。

 いつも私が傾ける薀蓄を聞いている彼が、最近初めて私に紹介した本が、池上彰『高校生からわかる「資本論」』(集英社)である。彼の文章は実にわかりやすく、この本を読むと、こんな簡単な内容を、あんな晦渋で難解な文章にしたカール・マルクスが恨めしい。私の兄と同年輩の彼も、私と同様、学生時代に『資本論』の読破に挫折している。「暴力革命」や「プロレタリアート独裁」等の過激なスローガン故に誤解された共産主義だが、本来は成熟した資本主義社会が前提であり、遅れたロシアや中国での革命は世界史の誤算だった。

X月某日

 今月は2回、例年神戸のNGOが派遣してくる大学生や高校生による、最近電気が通ったばかりで水道がまだない奥地の村に1週間泊り込んでの植林を引率するが、1回目の大学生28人の受け入れを無事終え、来週は中高生44人を引率する。加齢のせいで、年々受け入れが肉体的にしんどくなり、彼らを見ていると、自分も昔は若かったのにと溜息が出る。

 地球文明もいずれ加齢で衰弱していく。映画「2001年・宇宙への旅」の原作者アーサー・C・クラークのSF『地球幼年期の終わり』(創元SF文庫)は、20世紀文学の最高傑作の一つで、地球文明を遥かに超越した宇宙知性体による近未来の、文明人が未開人を観察・保護するような非暴力支配の物語であり、地球人には不可能な、戦争と競争の廃絶を実現させ、理想社会が実現する。彼らが悪魔の形態をして、地球人の超自然的能力に関心を示す点などは人類文明の根源に関しての示唆に富み、地球文明の終焉の様子は、最近現実性を増している。そうそう、マヤの予言では今年12月22日か23日に文明が滅亡するのだった!

三好良一

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