2013年3月−意思をもつ機械や無生物、おおらかな日本の性の歴史、刑務所の実態

月某日

13年来糖尿病を患っているが、昨年7月に測った、直近1〜2ヵ月の平均値であるヘモグロビンA1Cの数値は9.4と

かなり悪かった。その後糖質制限食と運動、そして代替療法を断念して近代医学に切り替えてから現地の病院で処方された薬を飲み続け、今年初めに測った数値は5.2と、日本で使っている空腹時血糖値で100前後に相当するほどに改善した。

現代医学や技術の素晴らしさを実感したが、科学技術の単純な礼賛は危ない。環境破壊の弊害は広く認知されてきたが、先端の科学知識と超常現象の融合を目指し、40年前の『スーパーネイチャー』で有名になった生物学者ライアル・ワトソンの『シークレット・ライフ』(ちくま文庫)では、自動車やコンピューターなどの機械や道具、無生物の石や人形などが意思をもち、時には人間に危害を及す事例が世界中から集められ、ルパート・シェルドレイクの、人間の想念の波動が土地に残留するという「形態共鳴」説を支持している。

X月某日

15年ほど前、ケランタン州コタ・バルの安宿で、当時50年配の放浪の日本人と出会い、2年後に、サバ州西海岸ボーフォートから内陸のテノムへ向かう列車の中で偶然に再会した。別れ際に、彼がバッグ代わりの継ぎはぎだらけの頭陀袋から取り出して私に進呈した、表紙が取れたボロボロの文庫本の著者が高橋鐡(てつ)だったが、題名は忘れてしまった。

サバ州先住民は日本の弥生文化と共通の文化基盤があり、神話も似ているが、フロイト派精神分析学者の高橋鐵の『日本の神話』(河出文庫)は「性のユートピアを求めて」の副題通り、日本文化が古代から性に対して非常に大らかだったことを、多くの文献や文化的事例から証明している。私も、右翼に傾いていた小中学生の頃、古代の英雄物語を期待して読み始めた『古事記』の抄訳本の、大胆な性描写の数々に驚愕した。結局、近代の固苦しい性道徳は本来は武士階級のもので、軍国化していた明治政府が国民に押し付けたわけだ。

X月某日

 15年前の1998年、日本のNGO派遣植林調整員だった私は、マラッカ市の聾啞学校で生徒たちを動員して植林を実施したことがある。私自身も生後半年に罹った中耳炎の処置が悪くてずっと軽度難聴だったし、一昨年から突発性難聴も加わって、今では補聴器なしでは日常会話にも支障をきたすほどだから、聾啞学校の生徒たちには、いたく同情を覚えた。

私自身も紙一重で彼らと同様の境遇に遭っていたかもしれない。元民主党の国会議員で、2001年に秘書給与の不正流用の罪で逮捕されて1年半懲役していた山本譲司の『累犯障害者』(新潮社)は、累犯者には知的障害者が多く、彼らは一般社会より刑務所の中が居心地が良いので、何度も同じ罪を犯して収監される事実を、刑務所での実体験から述べている。聴覚障害者の累犯者もいて、彼らは知的障害者ではないが、一般健常者たちとはコミュニケートできないので、彼ら自身の独自の精神世界とコミュニケート手段を共有しており、彼らの間で使われる手話も独自で、一般の手話は役に立っていない。この世に違和感をもち続けている私の精神にも、難聴というハンディキャップが影響しているかもしれない。

三好良一

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