2013年4月−遠くなった20世紀、神秘主義象徴の起源と意味、多様性豊かだった一昔前のアジア

月某日

1983年にサバ州に来て以来、マレーシア在住30年になる。7年前に永住権を申請して、音沙汰がなかったが、昨年意外にも移民局から勧められたので再申請した。今年初めに移民局の面接を終え、今後警察、州首席大臣府、最終的には連邦政府内務省の審査を受けねばならない。毎年数千人の候補者からサバ州では20人だけ選ばれるから、大変な狭き門だ。

しかし、30年は早い。いつの間にか私は、20世紀のアナログ人間の年寄りになった。その20世紀の世界史的な意味を、丸谷才一・山崎正和『二十世紀を読む』(中公文庫)で、カメラ、ハプスブルグ家、匪賊や馬賊、日蓮正宗、サッカー、ルーマニア出身の宗教哲学者エリアーデ等、斬新な切り口から二人の該博な評論家が縦横無尽に論じていて飽きさせない。特に、昭和前史の軍国主義の台頭に果たした日蓮正宗の役割の大きさに改めて感じ入る。宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」の最後が「南無妙法蓮華経」だったのは有名な話だ。

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サバ州旗は、キナバル山と海が象徴としてデザインされていて、わかりやすいのだが、全体の配置や色彩などチグハグな印象を与える。世界の国旗のデザインとして単純かつ美しく伝統を感じるのは日の丸だと思うが、最も単純でわかりやすかったのは、麻雀の役の「リューイーソー」、つまり回教の象徴の色の緑一色の、カダフィ治下のリビア国旗だった。

世界には多くの象徴があるが、その多くの起源がメソポタミアやエジプトなどの古代にまで遡る。日本の皇室の十六弁菊花紋も、バビロニアやインダスに起源を持つ。マンリー・P・ポール『古代の密儀』(人文書院)では、ピラミッド、古代ユダヤのカバラ秘儀、聖ヨハネ騎士団や聖マルタ騎士団、錬金術、フリーメーソンなど、西洋で伝統的に使われてきた神秘主義的象徴の起源や意味や変遷を説明している。十字架もまた、イエス・キリストの磔刑の象徴となる前から、南米を含む古代世界から伝えられてきた象徴の一つなのだ。

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サバ州は人種の坩堝と言っていいくらい、多くの人種や民族が居住している。中国南部由来のモンゴル系原住民族、その後に渡来したマレー系、中国系人らが20世紀初めまでに社会の基層を形成し、その後に西洋人、メラネシア系人、フィリピンからの第二波のマレー系などが混住し、通婚も増えてきている。私も原住モンゴル系民族と通婚したわけだ。

多くの異人種が混じり合う以前の、伝統生活を送っていた時代のアジアの写真記録として、荒俣宏の『アジアまぼろし画報』(平凡社)が抜群に面白い。1920年代、大恐慌以前の好景気時代の米国で発行されていた国際観光雑誌「エイシア」各号の写真を集めていて、表紙を飾るフランク・マッキントッシュのアール・デコ風のイラストが雰囲気があって秀逸だ。大正時代の日本各地、清朝の中国で纏足している若い女、ペニス・ケースをつけたニューギニアの酋長、トップレス美人のポリネシアの酋長の娘、バリ島の踊り子や素っ裸で水浴びする娘たち、入れ墨をして奇妙な挨拶を交わすマオリ族、そしてアフリカで多くの妻を従える酋長など、20世紀前半まで世界各地に残っていた多様な文化を満喫できる。

三好良一

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