2013年7月−進歩の行き詰まり、現代医学の敗北?シュメール由来の出雲の歴史 

月某日

 コタ・キナバルのホテルのボール・ルームで、私の知人で現地に長期滞在している日本人夫婦の手ほどきを受けたサバ大学の学生たちによる、茶道の集いが開かれた。彼らの一知半解のためにファッション・ショーのような首を傾げたくなる珍妙な出し物もあり、「一期一会」や「侘び寂び」のような日本的価値観を理解してもらうのは至難の業だと思った。

茶道や華道、能、日本料理など、現代の日本文化の原型ができた室町時代を扱った『室町記』を書いた山崎正和は、新著『世界文明史の試み』(中央公論新社)で、神話・宗教・道徳・藝術・結婚・行動や思考様式により構成される、世界各地の文明の進化を考察している。そして、近年の電波情報革命が世界文明を統一しつつあるが、同時に近代科学技術の圧倒的な進歩のため、文明の進化に関与できる人間の能力範囲が狭くなった結果、未来は、進歩の観念や未来志向ではない、知識を基盤とした社会になるだろうと予測している。

X月某日

ここ9年、神戸のNGOが送り込む植林団を受け入れてくれているサバ州の山奥の村では、1980年代には頻繁にコレラが発生し、その都度、白い便を垂れ流す患者を自動車に乗せて、未舗装のガタガタ道を数時間揺られて町の病院まで運んでいたが、近年のサバ州は、数年毎に発生する鳥インフルエンザやSARSなどには無縁だし、エイズもほとんど影響はない。

しかし世界的には、1960年代にはほぼ絶滅していたはずの伝染病が1980年代から続々と復活していることが、吉川昌之介著『細菌の逆襲』(中公新書)で詳しく書かれている。1986年の結核の復活はエイズの流行と、1980年の梅毒の復活はコカインの流行と関連している。その他に復活した赤痢、腸チフス、淋病、回帰熱等は、ペニシリンやバンコマイシン等の抗生物質に耐性を持った、MRSAなどの抗菌剤耐性菌の増加が原因だ。この本の細菌学・遺伝学・生化学的説明は難解ながら、科学技術への過信の危険性がよく理解できる。

X月某日

 ボルネオ島やスラウェシ島には、因幡(いなば)の白兎や、死んだ女神の体の穴から穀物が発生したとする穀物起源譚などの日本神話と共通する昔話が多い。ところで、日本神話を伝える古事記と日本書紀には出雲神話がかなり多く、出雲風土記ももちろん、出雲神話を伝えているが、三者の神話内容はかなり違って、因幡の白兎の話は古事記だけに出てくる。

吉田大洋『謎の出雲帝国』(徳間書店)は1980年発行の古い本だが、紋章学の知識と文献や現地調査、オオクニヌシの直系子孫の取材を基にした歴史考察が説得的で、今も古代史ファンには人気があり、近年復刻もしている。出雲族は、遥か昔に中東のシュメールから東南アジアを経て日本列島に来た、竜(蛇)を信仰する民族の子孫で、その後に朝鮮渡来の大和族に滅ぼされた。ヤマタノオロチ退治後にスサノオノミコトが詠んだ「八雲立つ…」の意味不明の歌は、出雲族の子孫の放浪民サンカの言語では戦争で負かした敵方の女を凌辱する意味だし、天孫降臨や神武東遷、国譲り等の神話もシュメール語で解くと従来と違う意味になり、硬直的な正統歴史学の解釈より臨場感があって、現実的だと私は思う。

三好良一

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