2015年12月−マッド・サイエンティスト?原子力公害の歴史と構造と未来、哲学の長い旅路

後継者に任せているサバ州山奥での植林事業で1週間ホームステイする村は、4年前まで電気がなかった。参加者である高校生や大学生たちは、電気のない生活が新鮮だったようだ。

dokushoX月某日

19世紀後半の電気の黎明期に有名だったエジソンは、実は他人の発明や特許を金で買い取っていた。エジソンは直流の送電を主張していたが、逆に交流の有用性を証明したのが、旧ユーゴスラヴィア出身のニコラ・テスラだった。彼は、19世紀末に電気を使ったパフォーマンスで有名となり、現在もテスラ・コイルや磁界の単位に名を残すが、その業績は忘れ去られていた。殺人光線の研究などにより、マッド・サイエンティストの烙印を押されたためだ。

しかし近年、彼を再評価する動きが大きくなり、業績全版が見直され、改めてその偉大さが再確認されてきた。冷戦末期に米国のレーガン大統領が打ち出したSDI(戦略防衛構想)でも、彼の光線銃のアイデアが取り上げられたようだ。彼の評伝である新戸雅章『発明超人ニコラ・テスラ』(ちくま文庫)を読むと、彼の先見の明や頭脳の回転の速さに感動を覚える。

X月某日

私自身も長崎の被爆二世なので、フクシマの悲劇には人一倍関心をもっている。dokusho2いろいろな情報を合わせると、セシウム汚染による甲状腺ガン患者が増えてきて、これは1986年にメルトダウンを起こしたウクライナのチェルノブイリ原発事故以後の傾向と一致しているようだ。チェルノブイリと同じように推移するとしたら、フクシマで本当に影響が出てくるのはこれからだということだ。現在、突然死が増えているが、これからますます増えるだろう。

広瀬隆『東京が壊滅する日』(ダイヤモンド社)は、反原発運動の旗手として長年活躍してきた著者の反原発論の集大成という感じの本だ。『東京に原発を!』『パンドラの箱の悪魔』『地球のゆくえ』『最後の話』『億万長者がハリウッドを殺す』『危険な話』等の著作で述べてきたことが適宜出てくる。『赤い盾』などで出てきた、原子力(ウラン)、貴金属、金融、食品、麻薬などのビジネスで世界の政治・経済・社会を操る世界の有力者の閨けいばつ閥も出てくる。

X月某日

dokusho3福島原発事故が「文明災」だと断定した哲学家の梅原猛は早くから、文明が環境破壊から始まったと述べてきた。特にその起源をメソポタミアの神話・伝説に登場するギルガメシュとエンキドゥによるレバノンの森の神フンババ殺害に求めた。地中海世界が現在乾燥気味の気候なのは、文明の発達による、船の材料のレバノン杉の過度の伐採が原因であり、中国の黄河地帯やインダス文明が栄えたインダス川流域もすべて、森の破壊が文明崩壊をもたらした。

梅原猛『日本冒険一〜三』(角川文庫)は、アイヌ民族の世界観が環境破壊をもたらす文明と対極の位置にあるとし、それら文明に共通する太陽崇拝に着目してメソポタミア、エジプト、ギリシアの各地に生まれた哲学の淵源を探っている。そして、これからは、アイヌや沖縄、オーストラリアやアフリカの狩猟採集民族、アメリカ・インディアンの自然と共生するあり方でないと、この文明は滅び、人類の生存は難しいと説く。原発再稼動など問題外だ。

三好良一

2015/12/09 | カテゴリー:コタキナバル読書日記

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