2015年5月−右翼の黒幕の寂しい老後、実在物も幻視と片付ける心理学者、日本の東西の歴史の違い

第二次大戦中、マレーシア各地は日本軍に蹂じゅうりん躙されたが、中国ほどではなかった。中国では日本人たちが阿片から希少金属まで強奪していたが、戦後右翼の黒幕として君臨した児玉誉士夫は、軍需物資のタングステンを集めて巨富を蓄え、それで戦後政治を動かした。

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有馬哲夫著『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』(文春新書)によれば、戦前は右翼過激派の鉄砲玉だった児玉が日中戦争時に中国に渡り、海軍のために中国や日本の鉱山でタングステンを集めて富を築いた。戦後A級戦犯として取り調べられるが、やがてCIAのスパイとなり、その後は豊富な資金力で、鳩山由紀夫の祖父の鳩山一郎、河野太郎の祖父の河野一郎などの保守政治家を育て、政界の黒幕となる。1960(昭和35)年の安保騒動の際には、当時の首相で安倍晋三の祖父の岸信介を助けようと、全国の右翼やヤクザを総動員しようとした。

しかし、1976年に発覚したロッキード事件で、全日空にロッキード社の航空機を売り込むための、田中角栄への5億円を含む20億円近い賄賂を追求されて進退極まった。同時に今の私のように脳梗塞を患ったために、人生前半が華やかだっただけに晩年は惨めだった。

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私はUFOを見たことはないけれども、存在して当然だと思っている。しかし、有名な深層心理学者のユンク(ドイツ語原音に従う)には、太古からの目撃や接触報告が無数にあるのに、集団幻想としか思えないようだ。C・G・ユング『空飛ぶ円盤』(筑摩書房)は、1950年代に世界中で急増してきたUFO目撃事件を、米国とソ連との間の冷戦による核戦争への不安が生み出したパラノイア的な集団幻想だとして、その集団心理分析を述べた本である。一方でユンクは、UFOが実在する物体である可能性も捨てきれないとしているが、UFOの夢や絵画についての分析を、集団的無意識やシンクロニシティ、シンボル(象徴)などの理論を交えながら長々と述べており、実在論者の私は苛々させられた。UFO現象は、決して集団幻想や与太話として軽視されるべきものでなく、人類文明、あるいは人類という種そのものの発祥につながる謎を秘めた、とても深い根源的な問題を内包しているのだ。

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サバ州のコタ・ブルッド地区のバジャウ族は本来は漁業や海賊を生業とする海の民なのだが、イギリス人がもち込んだ、本来はサバ州に生息していない馬を上手に乗りこなすようになった。同じような現象は、北米インディアンや日本人にも当てはまる。「魏志倭人伝」に記載されていない馬を日本に持ち込んだのは、朝鮮半島からの移住者たちだった。

網野善彦・森浩一著『馬・船・常民』(講談社学術文庫)は、日本の中世についての常識を覆した歴史学者と、考古学の泰たいと斗による、日本の東西の歴史の違いについての対談をまとめた本である。話題は多岐に亘るが、湿潤な西日本では船による交通や交易が主だったのに対して、乾燥した東日本では馬によるそれが主であったりと、地形や気象条件によって日本の東西での歴史の進み方が違い、決して一様でなかったことを理解させてくれる。

三好良一

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