2016年1月−妖艶なギリシア神話のニンフたち、やんちゃで不気味な地蔵、欺瞞に満ちたロシア革命

今年も7ヵ国約170名の参加者による、富士通植林を実施した。私は助手たちに体を支えられ、森林消失も一因の温暖化による世界中の異常気象について、絵を描きながら講演した。

dokushoX月某日

杉に覆われていた地中海地方が現在のように乾燥したのは、やはり森林消失の影響だが、ギリシア神話は脳天気で、恋愛の話ばかりである。中野京子『名画の謎 ギリシア神話篇』(文春文庫)に出てくる名画は、恋愛のテーマで溢れ返っている。アポロンの若き同姓の恋人「冷やし金時」…じゃなかった「ヒュアキントス」がヒヤシンスの花に変身したり、美少年に恋して全裸になって絡み付き、ついに男女一体の木となったニンフのサルマキスなど…。

だが圧巻は、この本の表紙を飾る画像になった、キプロス王ピグマリオンの話だ。女性の彫像に恋した王は、彫像を日夜愛撫していたが、ある日ついに願いが叶って、彫像が実際の女に変わり、こどもまで産む。その彫像が上半身から臀部にかけて柔らかくなり赤みがさしてきたが、下半身は相変わらず白い象牙のままという、変身の過程を表現した絵はエロティックだ。

X月某日dokusho2

長崎の田舎の、亡き母の実家の裏の小川の傍には、薄い石板の地蔵があった。私が4、5歳の時に遊んでいて倒してしまったら、母が慌てて「花ば摘んで来い!」というので下の畑で手当たり次第に摘み、いざ地蔵に供えようと坂道を歩き出した途端、姿の見えない重い物が背中に乗ってきた。やっと坂を上りきって花を供えた瞬間にそれはスーッと消えていった。

随分とやんちゃな地蔵もいるものだが、日本全国の、昔の偉人が弁当を食べ終えた後に地面に刺した箸が大木になったり、懐に入れて持ち運んだ小石が大きな岩に成長したりの伝承話を集めた柳田國男『日本の伝説』(新潮文庫)には、田植えなどの農作業を手伝う地蔵などの話が各地にあることがわかり、悪い地蔵ばかりではなかったことが知れる。私に不気味な思いをさせた地蔵はこどもの頃に死んだ先祖の一人らしいが、私とじゃれたかったのかもしれない。

dokusho3X月某日

オバマ米大統領がのんびりしている間に、中東でロシアが存在感を増している。まさに、ロシアとイランが中枢の軍隊がエルサレムに攻め込む「ヨハネの黙示録」の世界になってきそうだ。そのロシアは98年前の1917年11月7日のロシア革命で、レーニン率いる共産主義国家のソ連「ソヴィエト社会主義共和国連邦」となり、74年後の1991年12月に滅んだ。

猪木正道『ロシア革命史』(中央公論社)は、日露戦争で追い込まれたロシアで1905年に僧侶ガポンが率いるデモが皇帝の軍に弾圧されて数千人の死者を出した「血の日曜日」事件を契機として全土でストライキが起きた第一次革命から、1917年2月の皇帝の退陣を経て、11月に軍隊の反乱と女子労働者らの武装蜂起によって、ロシア革命が成立した経緯を述べている。後に革命の立役者を自負して、恐怖政治と愚民化政策を続けたロシア共産党=ソ連共産党は、実際は革命の実行には関係なく、民衆の獲得した成果を横取りした詐欺集団だった!

三好良一

2016/01/11 | カテゴリー:コタキナバル読書日記

このページの先頭へ