2016年7月−史上最強のウィルスと戦う 医師たち、 神の王国と地上の王国

脳梗塞をわずらってから2年経つが、最近体調が悪化して毎月3冊の紹介を続けることが困難となったので、今号から1~2冊を紹介することにしたいと思います。


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2015年は、西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3ヵ国で致死率90%以上のエボラ出血熱が発生し、多くの人が死亡した。エボラが最初に流行したのは1976年、ザイール(コンゴ)において、次に1980年、ケニアからザイールにおいてであり、リチャード・プレストン著『ホット・ゾーン』は、この1980年の流行時のドキュメンタリーである。
まず、エルゴン山近くでフランス人技師が罹患し、彼は自力で飛行機に乗ってナイロビ中央病院に辿り着くが、飛行機に乗っている間に全身の穴から出血して腎臓や肝臓が溶けて死亡した。次に彼を診察したケニア人医師らへと感染は拡大していった。当初マールブルグ出血熱が疑われたが、もっと強力な新種のウィルスであるエボラウィルスと判明した。騒動はアメリカへ飛び火し、医学用実験動物としてアフリカから輸入したミドリザルや東南アジアから輸入したカニクイザルが感染源となり、人間たちの間に被害をもたらした。そこで、陸軍とCDC(疫病コントロールセンター)が協力して、ワシントン近くのサル収容施設、通称モンキーセンターの400匹以上のサルを殺戮して回り、感染の拡大を抑えた。
エイズ騒動が収まってからも、人間がサルたちの棲む森の中へ進出して行くことで、次から次へと新たなウィルス病が発生する現状は恐ろしい。
それにしても、迷信深くて現代医学を信用せず、診療所を焼き払ったり、入院患者を無断で連れだしたり、医療関係者の忠告に逆らって死体に触れまくったりする現地人の無知と頑なさには無力感を覚える。いずれ人類はウィルス感染症で死に絶えるのではないか。
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遠藤周作『王国への道』は、山田長政を主人公とする小説だが、同時代に殉教した日本人神父ペドロ岐部と史実織り交ぜてストーリーが展開する。長政は元は藤蔵という静岡県の駕籠舁きで海外雄飛に憧れていて、慶長19(1614)年に切支丹追放例が出て日本人の海外渡航が禁止されると、長崎からマカオに追放される日本人信徒たちに紛れ込んでマカオに行き、そこで中国人商人に雇われてアユタヤ(タイ)行きを命じられる。アユタヤで頭角を現した彼は、やがて日本人傭兵隊長となり、オークヤ・セナピモックの称号を得る。同時に武士らしく山田長政と名前を改める。そして、マレー半島中部のリゴール地方の領主となる。その後、官房長官のオークヤ・カラホームとの争いが激化し、最終的に彼の罠にかかって殺されてしまう。
一方、藤蔵と同じ船でマカオに着いた大分県国東出身のペドロ岐部は、日本人を持て余していたマカオを捨てて西インドのゴアへ向かい、そこから徒歩で、途中で様々な仕事をしながらペルシア、トルコ、ギリシアを経てローマへ着いた。神学校へ入って神父の資格を得て、「信者が待っている」と言って日本へ戻ったが、やがて幕府に捕まり、惨い拷問を受けて殉教した。オウム真理教事件で初期に捕まった信者の中に岐部という苗字の者がいたが、ペドロ岐部と繋がりがあるのかどうかは不明だ。

三好良一

2016/07/05 | カテゴリー:コタキナバル読書日記

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