2017年3月−暴対法施行以後のヤクザの実態、神話・伝承・魔術・幻想文学・性文学の世界

 

10年ほど前、元部落解放運動家であり元ヤクザでもあった大阪の人で、ムショ暮らしも指詰めも、負けたら片腕を切り落とされる麻雀の代打ちも経験したことがある人にサバ州で出会った。その元ヤクザは、私の自宅にほとんど居候しながら、代替燃料の案件を調べていて、私も手伝っていたが、肝心の油がまだ生産されていなかったために、その案件は実らなかった。

X月某日
1992年に施行された暴対法、つまり「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」により、暴力団の活動は若干衰えたものの、山口組分裂のような対立抗争は決して衰えてはいない。鈴木智彦の『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)は、ヤクザ専門誌『実話時代』の元記者・編集者による暴対法施行以後のヤクザの実態を追いかけた本である。
彼がネグラにしていた新宿の通称「ヤクザ・マンション」は、入居者の半分以上がヤクザ関係者で組事務所も多数あり、ベランダにヤクザの死体が落ちてくるような環境だった。彼は、安藤昇の舎弟だった加納貢を晩年に自室に居候させて彼の記事を書いたりした。ちなみに安藤昇は敗戦後に渋谷を中心に勢力を張っていた愚連隊「安藤組」の組長で、ホテル・ニュージャパンのオーナーの横井英樹を襲い、服役後に映画スターになった。
加納は金銭に無頓着で、子分たちにはゆすりたかりを一切禁じていたので、子分たちは一人残らず離れていき、晩年は孤独で金もなかった。月に一度の懇親会には詐欺師が集まり、加納から金をむしっていたそうだ。
著者は京都に飛んで殺人事件を起こして収監されるヤクザの取材に走り回ったり、大阪の釜ヶ崎や売春街の飛田新地での取材のほか、関西ヤクザが行う手本引きと呼ばれる博打の取材もしている。

 

 

 

X月某日
自由国民社『世界の奇書101冊』(自由国民社)は、世界中の神話・伝承・魔術・幻想文学・性文学などを集大成した楽しい本だ。キリスト教の教義に基づく地獄絵巻、メソポタミア・ギリシア・エジプト・インドの「リグ・ヴェーダ」に「マハーバーラタ」、北欧の「エッダ歌謡」、ギリシア・ローマ馬代のアリストパネスの妻たちがセックス・ストライキを起こす「女の平和」、オウィディアスの「変形譚」。聖書の聖典に収められなかった外典や偽典文書として、人妻スザンナの行水を盗み見たり、神殿の供物を盗み食いしていたユダヤ教の僧たちを「大岡裁き」でこらしめた「ダニエル書補遺」、イエスの冥府(地獄)巡りの話がある「ニコデモ福音書」、イエスの幼年時代の神童ぶりを紹介した「トマスの書」。性小説としてはサディズムの語源のマルキ・ド・サドの「ソドム120日」やマゾヒズムの語源のザッヘル・マゾッホの「毛皮のヴィナス」、ウラジーミル・ナボコフの少女趣味を描いた「ロリータ」、女性遍歴の記録としては「カザノヴァ回想録」などがある。空想譚として「日月両世界旅行記」、さらに、西洋の妖怪伝説として名高いメアリー・シュリーの「フランケンシュタイン」や吸血鬼の伝説類などが出てくる。
こうして眺めてみると、人類の想像力がいかに豊かであるかがよくわかる。

 

 

 

三好良一

2017/03/13 | カテゴリー:コタキナバル読書日記

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