マレーシア最新芸術事情 2017年10月-独立記念日に想う

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独立記念日に想う

毎年8月31日の独立記念日(ムルデカ・デー)が近くなると、各企業がこぞってイメージCMを流します。今年もそんなCMが多く流れるなか、記念日を目前にした8月28日、今までとは全く違ったあるムルデカのビデオがネット上で公開され、あっという間に話題となり、9月10日時点でヒット数は27万9,473回を達成していました。
『國民 CITIZENS』と題されたその作品は、与党MCA(マレーシア華人協会)の党首を務めるリオウ・ティオン・ライ運輸大臣が、本人と一市民の二役を演じるというかなり奇抜なもの。大臣が、おそらく彼の古くからの友人を訪ねて交わす言葉のやり取りは、大臣のこの言葉からはじまります。
「この10年間は皆にとってつらいものだった」「私たちが今まで十分にやってこなかったのも、皆が将来に不安を抱いているのも分かっている」「どうにもできなかったんだと言い訳を言うこともできるけれど、私はそうはしない」(中略)「ここに来たのはただ、この国をあきらめないでほしいと言いたかったからだ」。
これに対して、一般市民である友人は怒りをぶつけます。それは実際私たちが日常耳にする政府に対する不満、また、中華系国民のMCAに対する絶望をあらわすもの。
私が何よりもまず驚いたのは、この国には何も問題ないと装い続ける現政府の大臣の一人が、国民の不満をきちんと肯定していること。そして、自らの力不足を認めていること。ネット上では、「どうせ次の選挙の票集めに違いない」などとかなり辛辣なコメントが飛び交い、パロディーまで出てくる始末でしたが、たとえセリフとはいえ、リスクを承知の上で「あなたがあなたの道義に従うのなら、どの党に投票しても構わない」とまで口にしたその背景には、やはり大臣の本心が少しは込められているのではないかと、少し切なくなりました。
数々の中傷に対してどう感じているかと、この作品の監督の一人であるリュウ・センタットに聞いてみると、「想像以上に好意的な意見が多かった。この作品が、皆が話し合う切っ掛けになってくれればそれでいいんだ。大事なことは望みを捨てないこと」とのこと。ネガティブに捉えられることを百も承知でこんなプロジェクトを実現させるセンタット、そしてもう一人の監督であるピート・テオはやっぱりただものではないと確信した今年のムルデカでした。

動画はこちらから
www.youtube.com/watch?v=4aL7AdI9qdU

アティカ

2017/09/29 | カテゴリー:マレーシア最新芸術事情

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