マレーシア最新芸術事情 2018年11月-今が旬? 「新しいマレーシア」での検閲問題

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「新しいマレーシア」での検閲問題

去る5月9日の総選挙によって実現した政権交代。この5ヵ月間でかなり大きな進歩が見られたと思う反面、人々の期待が大きすぎるのか、まだ改善されていない点、不満に思う点があると、皆二言目には口をそろえて「新しいマレーシアなのに…」とぼやきます。芸術作品に対する検閲も然りで、前政権時代から変わらぬ検閲の厳しさに、「新しいマレーシアなのに」という人が多いですが、そこはちょっと違うのではないかな? と思うことがあります。
検閲の対象となる表現としては、①性的描写、②過剰な暴力、③政府批判、が主要なものとされてきましたが、ここ数年ではそれに加えてLGBT関連、宗教を冒涜するものなども検閲の対象となってきています。はっきりとした基準が定まっているのは映画やその他映像作品(TVCMなども含む)で、マレーシア国内で上映・放映する映像作品はすべて内務省フィルム検閲局での検閲を義務付けられています。以前はホラーが一切禁止だったのが、2005年頃から何故か解禁。今ではかなりグロいものや血まみれドロドロでもOKです。美術作品に関しては、特にきちんとした法律が定められているわけではないので、通常は各美術館や主催者側の判断にゆだねられますが、何か問題が起こると警察沙汰になります。
そういった厳しい検閲の度合いがゆるくなるのでは、と期待している人も多いようですが、いくら「新しいマレーシア」とはいえ、基にしているのはイスラムの教え。その判断基準が大きく変わることはこれからもあまりないだろうと、私は思っています。政府批判に関しては、今は前政権を批判するものはウェルカム状態ですが、これから数年後、現政権を批判する作品が出てきたときに、検閲がどう行われていくのか、あるいは行われないのか、とても気になるところです。
7月に商業公開される予定だった是枝裕和監督の『万引き家族』。その直前にカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞したこともあり、当地映画ファンの間でも期待が高まっていました。が、検閲局から求められたカットを日本の制作側が了承しなかったらしく、残念ながらマレーシアでの上映は公開目前に中止となりました。
検閲制度がなくなるなどというのは夢のまた夢ですが、もう少しうまくレーティング制度(年齢制限)を活用してくれるようになるといいのですが。

アティカ

2018/10/29 | カテゴリー:マレーシア最新芸術事情

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