マレーシア最新芸術事情 2019年10月-M for Malaysia

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M for Malaysia

マレーシア国内のみならず、世界にも衝撃と感動を与えた昨年5月9日の第14回マレーシア総選挙(GE14)から早くも1年5ヵ月。その後9月にGE14を映画化した『RISE: Ini Kalilah』という作品が劇場公開されたものの、選挙の興奮冷めやらぬうちにと急いだのか、どうも表面的になぞっただけのような残念なもの。あれだけの歴史的ドラマをちゃんと映像にまとめる人はいないのか! と思っていたところ、今年のマレーシアの日にぶつける形で『M for Malaysia』というドキュメンタリー映画が期間限定で劇場公開されました。
エグゼクティブ・プロデューサーはマハティール首相の娘で、コラムニスト、アクティビストとして知られるマリーナ・マハティール(Marina Mahathir)。そして彼女の娘イニザ・ルシール(Ineza Roussille)が監督の一人とマハティール首相のインタビュアーを務めています。『M for Malaysia』というくらいなので、身内が作ったマハティール首相寄りのプロパガンダ映画では? と思うかもしれませんが、冒頭部分でイニザが祖父に対して思う気持ちを正直に述べているのが印象的です。
「彼が仕掛けた数多くのメガプロジェクトがこの国の経済的発展に大きく貢献したことは否定できないけれど、Operasi Lalangなど、私には納得いかないこともしてきている」と、マハティール首相が前回の任期中に行ったネガティブな部分に触れることからはじまります。そしてその1987年のOperasi Lalang(野党幹部の一斉逮捕と新聞の発刊停止)の被害にあったDAPのリム・グアンエン財務相や、98年に同性愛疑惑で監獄されたアンワル・イブラヒム元副首相の妻であるワン・アジザ副首相、PKR広報部長でもあるファーミ・ファディル国会議員などへのインタビューを通して、この国を守るという政治家としての使命のために、自らのエゴを捨てて「許す」という彼らの決意が見えてきます。
GE14での野党連合の勝利は、マハティール氏のリーダーシップもさることながら、マハティール氏をよく思わない党員も多い各党が、バラバラ戦っていたのでは与党連合に勝てるわけがないと共に戦うことを決めたからこそ実現したものです。この作品は、近親者だからこそ撮ることができたマハティール首相の素顔を映し出しながら、歴史的勝利への道のりと、それぞれの権利と約束をもう一度思い出させるという意味で、この時期に公開されることに意義があったのだろうと思いました。

アティカ

2019/10/01 | カテゴリー:マレーシア最新芸術事情

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