マレーシア最新芸術事情 2019年2月-偉大な劇作家を偲ぶ 「Teater Yeop:Tribute to Datuk Syed Alwi」

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偉大な劇作家を偲ぶ「Teater Yeop:Tribute to Datuk Syed Alwi」

マレーシアを代表する劇作家の故サイド・アルウィ氏は、俳優としても活躍し、ジョディ・フォスター主演の映画『アンナと王様』などにも出演していた人物です。去る12月末に上演された追悼の表題作では、同氏の戯曲の中から3作品の名場面が再現されました。
『Alang Rentak Seribu』(1973)は、ある田舎町での映画撮影現場でその村のアランという若い男性が、撮影チームと村の人々の間に起こるドタバタを解決していくコメディ。『Tok Perak』(1974)は34年間全国を渡り歩いていた薬売りの男が故郷に戻ってくる話。そして『Going North』(1980)は、マラヤ非常事態下の1949年、故郷へ帰るための列車を待つ大学院生とそこで出会ったある老人との対話と衝突を描いたもの。
公演は劇場の外からはじまりました。まずはトッ・ペラが登場し、観客を巻き込んで"男らしくなる薬"の実演販売。そのテンポの良さから、「四谷、赤坂、麹町、ちゃらちゃら流れるお茶の水~」というあの寅さんの口上が私の頭をよぎり、楽しい気持ちになります。
そして劇場の中に入ると、『アラン・レンタッ・スリブ』の映画撮影のシーンがスタート。ここでも観客がどんどん巻き込まれ、カメラマンや衣装さんの役を突然与えられるのですが、みんなちゃんと役になりきり、「カメラ回ってる?」「回ってます!」、「俺の衣装早く持ってきて!」「はい、分かりました!」などのやり取りが即興で行われ、劇場は何度も笑いの渦に。
その後も、サイド氏と親しかった人たちの思い出話や全員参加のゲーム、『ゴーイング・ノース』では主人公二人の熱い言葉のやり取りが繰り広げられる、といったように、3作品の名場面を軸に、様々な要素が巧みにそして自然に取り入れられ、入れ替わっていきます。そのなかには、10年前に自宅の裏で倒れたまま亡くなっているのが発見された同氏の死因の説明も。あの時いったい何が起こったのか、今までほとんど明かされていませんでした。
「マレー人としてのアイデンティティ」を描き続けたサイド・アルウィ氏。この優れた劇作家の作品を、彼の没後10年にあたる年に若い世代が見直し、こんな素敵な形でみせてくれるとは、まるで年の瀬にちょっと素敵なプレゼントをもらったような嬉しい気持ちで劇場を後にしました。

アティカ

2019/02/07 | カテゴリー:マレーシア最新芸術事情

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