2012年4月-第18回

★お金や物を与えるほめ方には、注意が必要です

 以前にもお話ししましたが、最も簡単で、最も有効なほめ言葉は、「ありがとう」です。

 私たちが、人から「ありがとう」と言われると、どうしてうれしいのか、というと、何かお礼を言ってくれたからうれしい、というよりも、自分のやったことが人の役に立てた、自分の存在に意味があった、と思えるからうれしいのです。

 人間にとって最も大切な自己肯定感をダイレクトに育てる言葉です。 

 思春期の子などは、下手にほめても、「ふん」という感じですし、「そんな当たり前のことで、ほめられたくねーよ」と言う子もいます。しかしそういう子でも間違いなく届く、ほめ言葉、それが、ありがとうです。ちょっとしたことでもいいのです。左の物を右にやった、そういうことでも「ありがとう」と伝えていくことで相手の自己肯定感が育まれていくのです。 

 自分も人の役に立てるんだ、自分も必要とされるんだ、そういう気持ちが、心の成長の土台になり、勉強に意欲的に取り組んだり、社会のルールをちゃんと守ったりすることの基礎になります。自分も大切な人間なんだ、と思えて初めて、他人も大切にできるようになるのです。「いいことをしたら、お金や物を与えるほめ方はどうか」と聞かれることがあります。確かに子どものがんばりをちゃんと認めておられる、という意味ではいい面もあると思います。ただそれを繰り返していると、お金や物をもらうために、行動する子にしてしまいかねない、という心配があります。そうなると、逆にお金や物をもらえないときは、何も動こうとしなくなるでしょう。 

 私たちが本当に育てたいのは、お金や物をもらえなくても、人が喜んでくれる、ありがとうと言ってくれる、それを喜びとして生きていく子だと思います。それなら、私は、別にお金や物を与えなくても、親御さんが、うれしそうにする、「ありがとう!」と言う、それでじゅうぶんじゃないかと思います。小学校高学年くらいまでは、それだけでじゅうぶん子どもの動機づけになりますし、お金や物を与えるのは、特別な日だけでいいと思います。

明橋大二(あけはしだいじ)

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