2015年3月-マレーシア最新芸術事情

Re : Engage : The People’s Court

 ペナン島ジョージタウンのど真ん中、Kimberly StreetとCintra Streetの裏に小さな団地があります。People’s Courtと呼ばれるこの団地は、50年以上前にペナン州政府が初めて建てた低所得者層向けのアパートだそうで、当時から現在に至るまで、この一角では広東語が話され、おいしい広東料理が食べられることで有名だそうです。4階建ての3軒のアパートのユニットはどれもとても小さくて、第2世代、第3世代は既に外で暮らしているとのこと。でもそれぞれの家が小さいからこそ、共有スペースで過ごす時間が多く、住民はみな家族のようです。

そんなPeople’s Courtで、4人のマレーシア人アーティストたちがそれぞれ1ヵ月間滞在して制作をするというプロジェクト“Re: Engage: The People’s Court”が行われました。ジョージタウンで生まれ育ったキュレーターが、世界遺産登録後、めまぐるしく変わっていく街の様子に危機感を抱き、そこに暮らし続けてきた人々の声を、生活の様子を、もっと外の人に知ってもらい、きちんと残していきたいという思いのもとに企画された事業です。1月25日の成果展オープニングを目指して11月から徐々に行われた滞在制作は、アーティストたちが住民のおじさんおばさんたちと打ち解けることからスタートしました。参加アーティストはみな、素朴かつ人懐っこい性格であることから、少しずつコミュニティーに受け入れられていきました。一緒にご飯を食べ、時にはお泊りまでさせてもらい、かつて盛大に行われていた年中行事を復活させるなど、高齢者が多くなりつつあったコミュニティーが活気づいていきました。

 そして行われた1月25日の成果展オープニングセレモニー。アパートC棟4階にあるユニットの展示スペースには3名のアーティストの作品が展示され、集会場の1階には、このプロジェクトの経過をたどった写真の数々と、住民の声を録音したオーラルヒストリーコーナーが設けられました。式典は住民のカラオケからスピーチ、参加アーティストの演出によるパフォーマンスと、盛りだくさんなものになりました。

 ペナンの芸術関係者、住民の友人や親せきなども多数訪れ、笑い声や掛け声がひっきりなしに飛び交うその会場の風景は、集会所に保存してあったアルバムの中で見た京劇公演の写真、活気があった頃のPeople’sCourtの様子にそっくりでした。

アティカ

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