2017年11月-100回 ビントロング

中型哺乳類でありながら知名度が低い動物にビントロング(Binturong)がいる。動物園で見たことがある人もいるだろうが、多くの人が初めて耳にする名前だろう。名前の由来は不明だが、古いマレー語からきているともいわれる。
ジャコウネコ科の哺乳類であり、同科で最大の種でもある。インド北部からインドシナ、マレー半島、インドネシア、フィリピンにかけて広く分布する。体長は最大で80センチほど、尾長も70センチほどになり、体重は最大で30キログラムに達する。果樹を主食とするため樹上生活が多いが、地面に下りて昆虫や魚、鳥の卵などを食べることもある。
太い尾は木の枝に巻き付けることができ、ブラさがることもできる。これができる肉食動物はアジアではビントロングだけだ。毛色が黒く耳が丸いので、クマに見えなくもない。歩く際に足のひらをベッタリつけるところもクマに似ている。ジャコウネコ科らしく、お尻の分泌線から「ポップコーン」に例えられる臭いを出す。毛皮をとるために乱獲されたり、森林が減っているため生息数が減少しているという。
その体型や生態は、レッサーパンダに似ている。たしかに英名の「Bear Cat」を中国語に直訳すると熊猫(パンダ)だ。しかし実際はビントロングはネコ亜目、レッサーパンダはイヌ亜目であり、本コラムで度々書いているように「他人の空似」なのだ。ちなみにビントロングの正しい中国語名は「熊狸」だが、タヌキもイヌ亜目であり誤解を招きかねない。
命名にまつわるややこしい問題は通俗名だけでなく、学名にも及ぶ。ビントロングの学名(Arctictis)はクマ(arkt)とイタチ(iktis)を合成したもの。イタチはイヌ亜目だからこれも問題がある。まあビントロングが初めて西欧に紹介されたのは200年も前の時代だから責められないが、パンダでもタヌキでもイタチでもなく英名の「ネコ」が一番正解に近かったというのは面白い。

伊藤祐介

2017/11/27 | カテゴリー:自然のはなし

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