2017年5月-ジュゴン(後編)

前回に続いてジュゴンの巻。僕が行ったタイ南部のアンダマン海に面するリボン島は、面積35平方キロメートル、人口3500人ほどの小さい島。タイで唯一のジュゴンの生息地だ。沿岸に90頭ほど生息しているとみられ、特に乾期はよく目撃されるという。僕が訪れたのは今年の中国正月だ。
前号で書いたようにジュゴンは巨漢であり大食だ。主食の海草は浅い砂泥に生えるが、食欲を満たすためにはかなりの面積が必要になる。量が足りなければ、当然エサを探して広い範囲を移動する。沖縄の調査では数十キロメートルの行動範囲のある個体もあったという。これからも、「辺野古基地周辺移設計画で海が埋め立てられればジュゴンが絶滅する」という基地反対派の主張がウソであることが分かる。米軍基地に反対するのは自由だがジュゴンをダシにしたウソはいけない。
さてリボン島だが、シュノーケリングで一緒に泳ぎたいと思ったが、保護動物なので禁止されているというのでロングテール・ボートの船上から観察することにした。2時間ほどのチャーター料は千バーツ(約128リンギ)。満潮を待って島南部の水深5メートルほどの波の穏やかな場所を目指す。人が歩くほどのゆったりした遊泳速度なので、エンジンをストップさせてボートを波に任せてジュゴンを待つ。じっと観察していると、やがて波間に灰白色の胴体が見える。プハッという呼吸音と共に頭を水面に出すが、すぐに沈んでしまう。しかしクジラのように長時間潜水でないので、しばらく待っているとすぐ水面に上がってくる。
こうして場所を変えながら2時間ほどジュゴンを探したが、周辺に少なくとも4頭はいたと思われる。あまり浅かったり、深かったりすると移動してしまうという。タイでは細長いアマモではなくウミヒルモという丸い葉っぱの海草をよく食べるそうだ。のんびり平和的でユーモラスなジュゴン。ぜひマレーシアでも復活して、気軽に見学できるようになって欲しいものだ。

伊藤祐介

2017/05/16 | カテゴリー:自然のはなし

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