2017年9月-98回 アカガオサイホウチョウ

凝った巣を作る動物は多い。巨大なダムの下に作るビーバーの巣は有名だが、鳥の巣もなかなかなものだ。木の枝を使ったり石を使ったり、地面に穴を掘ったり木に穴を開けたりと素材も技法も多種多様。なかでも素材的にも技巧的にスゴイのがウグイス上科のサイホウチョウの仲間だ。
日本でも見られる近縁のセッカは、草とクモの巣を使って巣を作ることで知られるが、東南アジアなどで広く見られるサイホウチョウは、同じくクモの巣を使うものの巧妙さで更に上をいく。クモの巣や植物の繊維を縫い糸代わりにし、細い嘴を縫い針のように使って器用に木の葉を縫い合わせて巣を作るのだ。和名は英名の「仕立て屋」を直訳せずに「裁縫」とし、「トリ」ではなく「チョウ」と名付けたのは、語感からいっても語呂からいってもグッドなネーミングだ。
僕がよく行くクアラセランゴール・ネイチャーパークで必ず見かけるのが、アカガオサイホウチョウ(Ashy Tailorbird)だ。東南アジアの海岸線に近いエリアに広く分布する。全長は11〜13センチほどで、スズメよりやや小さい。小さな鳥らしく活発に動き、なかなかじっとしていないのだが、縄張りを主張するためかメスを呼ぶためか、枝に止まったままチュリチュリ、あるいはチウチウといった感じでよく鳴くので比較的見つけやすい。
観察していると、大きく柔らかめの葉が好みのよう。ふんわり丸めて筒状にしやすいからだろう。巣をつくる植物の茎は柔らかいから、やっとこさで巣を支えられる程度の最低限の強度しかない。こうした場所を選ぶことで、天敵のヘビなどが巣まで上がってこられないようにしていると考えられる。
クアラセランゴール・ネイチャーパークは森林帯が灌木帯、マングローブ帯に移り変わって行く場所で、アカガオサイホウチョウが好む背の低い草木が茂っている。クモもこういう場所を好んで巣を作るので、縫い糸の材料の入手もしいと思われる。

伊藤祐介

2017/09/19 | カテゴリー:自然のはなし

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