2018年11月-112回 ヤブカ


マレーシア在住18年目にして初めてデング熱にかかり、5日間入院した。デング熱はヤブカ属に属するネッタイシマカ(Yellow Fever Mosquito)やヒトスジシマカ(Asian Tiger Mosquito)がウイルスを媒介する伝染病だ。
感染拡大を防ぐには媒介蚊を根絶することが重要であるため、医師から蚊に刺された場所について根掘り葉掘り聞かれた。潜伏期は多くのケースで3日〜7日程度なので、だいたい犯人の居所の見当がつくのだ。デング発生は当局に報告され、駆虫業者が現場に殺虫剤散布に向かうことになる。
僕は該当する期間に蚊に刺された記憶がなかったのだが、可能性があるとすれば野球練習中に某所の公園脇の薮に入ったボールを取りにいった時しかないと思ったので、医師にはそう答えた。僕が運悪くデング熱に発病してしまったため、薮に住むコオロギなど他の無実の昆虫たちも恐らく殲滅されてしまっただろう。気の毒なことをした。
「自然観察者」のはしくれの僕としては、一番知りたかったのは「ネッタイシマカかヒトスジシマカのどちらに刺されたのか」だ。デング熱ウイルスには4つの型があるが、どちらの蚊もどのウイルスも媒介するらしく、ウイルス型だけでは犯人は特定できない。そうなると蚊の生態から推理するしかない。
ネッタイシマカもヒトスジシマカも幼虫は空き缶や捨てられた容器などに溜まった水などで成長し、成長後は昼行性で待ち伏せして獲物を狙う点で共通している。ただネッタイシマカは行動範囲が狭く人家の近くを好むが、ヒトスジシマカは庭や薮などを好むといった微妙な違いがある。
僕が刺された薮のある公園は首都圏郊外の住宅街にあるが、住宅はもっとも近い所でも100メートル以上離れている。どちらも生息範囲は100メートル程度とみられており、現場が薮ということからみてヒトスジシマカが犯人だと僕は思っている。

伊藤祐介

2018/10/29 | カテゴリー:自然のはなし

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