2018年8月-109回 ピーコックファーン


タマンネガラ国立公園のジャングルを歩いていると、日光があまり当たらない道の脇に不思議な葉の形と色をした植物が目に付く。シダ植物の仲間のイワヒバ科の植物で、英語でピーコックファーン(Peacock fern)などと呼ばれているものだ。
英語名を直訳すると「クジャクシダ」となるが、和名で「クジャクシダ」というホウライシダ科のシダ植物が別にあるので、ここでは英名のカタカナ表記とする。それぞれ勝手に付けられたためだがややこしい。
丈は低く、せいぜい20〜30センチメートルくらい。無数に枝分かれした茎に長さ3〜4ミリ、幅2ミリほどの小さな葉を、茎が見えなくなるくらい密集させて茂らせる。遠目でみると、一枚の葉にみえるほど隙間なく密集している。
茎の枝分かれや葉を生やす方向は決まっており、結果的に茂った姿は扁平に見える。枝分かれした茎の先端部分に胞子嚢穂をつける。胞子嚢とは胞子を作る袋状の部分。シダ植物なので実や種でなく胞子で増えるのだ。
最も目を引くのは、クジャクの羽のように角度によって青や青緑に見えるその葉の色だ。葉そのものの色は緑色のようなのだが、英名にあるように虹色に見えるのだ。これは構造色といい、シャボン玉のように非常に薄い膜に光が当たった際に干渉が起こり、見る角度によって色がついて見える現象だ(薄膜干渉)。ピーコックファーンの葉の表面の薄い膜がこうした現象を起こしているためで、決して自ら青色の光を発光しているわけではない。
日本では親戚筋に当たるコンテリクラマゴケというイワヒバ科の植物が分布しているが、この不思議な和名は「紺照り」から来ておりピーコックファーンと同じ仕組みであることが分かる。
ところでクジャクなどは繁殖の際の異性へのアピールのために構造色を利用しているかもしれないが、なぜ胞子で子孫を増やすシダ植物で構造色が必要なのだろう。不思議だ。

伊藤祐介

2018/07/24 | カテゴリー:自然のはなし

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