2019年11月-124回 メルバウ


これまで「メルバウ(Merbau」という木の名前を知っている人は少なかっただろう。一躍知られるようになったのは、最近マハティール首相がマレーシアの「国の木」に指定したためだ。最大で樹高50メートル、直径1.5メートルほどになるマメ科の常緑樹で、英語で「マラッカ・チーク」とも呼ばれる。
黄色の花が咲き、17〜20センチメートルにもなる巨大な鞘をつける。中には直径3〜4センチメートルにもなるこれまた巨大な豆が入っている。まるでジャックの豆の木だ。
沿岸部や標高850メートル以下の低地で多く生息する樹木で、表皮は赤みがかった薄茶色で滑らか。比重は0.84程度と重く、黒檀には及ばないがラワン、ウォールナット、クリなどより密度が高い。堅いので家具や床板などに使われる。
湿った状態で鉄に触れると鉄を腐蝕し木材の表明が汚れるので、乾燥した状態での使用が好ましいとされる。巨大で堅く利用度が高いこと、全土に分布していることから国の統合の象徴たる「国樹」に相応しいと判断されたようだ。民族・宗教の関係が複雑なマレーシア。マハティール首相もあれこれ気を遣わなければならず大変だ。
マレーシアでは国花がすでに制定されている。本連載でも紹介したブンガラヤ(ブッソウゲ)だ。実は国花と国樹の両方が制定されている国はそれほど多くない。アルバニアは国花にケシ、国樹にヨーロッパナラを、ギリシャは国花にアカンサス(アザミの仲間)、国樹にオリーブを制定している。日本は桜が国花という扱いなので、事実上桜の木が国樹ということになろうが、あくまで慣習的なものであり特に法的根拠はない。
メルバウが国樹に指定されるとメルバウの商業価値が上がりメルバウの植林が進む可能性がある。メルバウにとってはいいことかもしれないが、メルバウ以外の樹木の保全がないがしろにされ偏った森林体系になる可能性もある。何事もバランスが必要だ。

伊藤祐介

2019/11/01 | カテゴリー:自然のはなし

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