2019年3月-116回 木生シダ  


マレーシアタマンネガラ国立公園などのジャングルを歩くと、木生シダ(Tree Fern)と呼ばれる巨大なシダ植物をたびたび目にする。成長すると高さ3〜4メートル、基部の太さは40〜50センチメートルにも育つ。まるで自分が小人になったような気がしたり、ジュラ紀に迷い込んで来たような気がしたりして嬉しくなってしまう。
ヘゴ科の木生シダの新芽はふさふさした茶色の毛に包まれた渦巻き型で、日本で山菜として食されるゼンマイにそっくりだが、その大きさはハンパではない。渦巻きの直径は10〜13センチメートルにもなり、茎の太さも直径2センチメートルにもなる。この巨大な新芽が育つと葉を広げてシダの形になるが、これが1〜2メートルの巨大サイズになる。大きな葉には他のシダ植物と同じく胞子嚢があり、胞子を飛ばして増えていく。
これだけ巨大化する木生シダは立派な大木と言っても差し支えなさそうだが、シダはシダであって決して「樹木」ではない。
一般的な定義によると、多年に渡って成長し年輪ができる植物を木本類、寿命が短く年輪ができない植物を草本類と呼んでいる。簡単に言えば木なのか草なのかということだが、実際には季節の変化がない熱帯の木では年輪ができないし、竹のように成長が止まる木もある。また多年草のように寿命が長い草本類もあるので、厳密に区別するのは難しい。
シダ植物は草本類だが、木生シダはひげ根のような不定根と呼ばれるものが発達する。ふさふさした茶色の毛の正体は実は不定根だ。不定根が茎を覆う形で次第に硬く太くなる。シダの基部は木本類のように硬く太く成長しているようにみえるが、木本類のように幹が肥大成長をする訳でないので「他人のそら似」だ。「木生シダ」という微妙な呼び方は、両方の性質を持っているという点から来ているのだ。

伊藤祐介

2019/03/01 | カテゴリー:自然のはなし

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