2019年6月-119回 ゴシキエビ


ダイビングで岩棚やサンゴが発達している場所を潜る際にはどうしてもその下を覗いてみたくなる。夜行性の魚などが休憩している可能性が高いからだ。運がいいとイセエビ科のゴシキエビ(Painted Spiny Lobster)に出会えるかもしれない。
生け簀のあるシーフードレストランでご覧になった(お召し上がりになった)方もいるだろうが、ゴシキエビは体長が30センチもある立派なイセエビの仲間だ。西太平洋からインド洋にかけ広く分布する。ニシキエビという類似の巨大エビもいるが、ゴシキエビは美しさではトップクラスだ。夜行性なので日中は岩の影にひそみ、夜になると動き出して貝やカニ、ウニなどを補食する。
英語でイセエビ科のエビのことをクレイフィッシュ(Crayfish)と呼ぶが、ロブスターとも呼ぶ。ロブスターは一般にはザリガニを指す。西洋料理で食べるロブスターはザリガニの仲間だ。一方イセエビはザリガニのようにハサミをもっていないし、広義のエビの仲間とはいってもちょっと縁は遠い。ただ海底や川底を這うという生活スタイルや体型は似ていなくもないので、ごっちゃになったものとみられる。
国立公園に指定されている世界の多くのダイビングスポットでは禁止されているのだが、中にはイセエビの仲間を豪快につかみ取りできる場所もある。西オースラリア・パースのロットネスト島は有名。シーズンになると、ダイビングショップの入り口にはダイビング客が誇らしげに50センチもありそうな獲物を掲げている写真が飾られ、格好の客引き役になっている。
イセエビ科といえば、僕は南アフリカ・ケープタウンのケルプ(巨大海藻)の森でダイビングした際、砂地を埋め尽くさんばかりの数百匹のイセエビの仲間がゾロゾロ歩き回っているのに出くわしたことがある。「脚いっぱい系」の生物(ムカデとかゲジゲジ)を見るとジンマシンが出る人だったら卒倒するのは間違いない。

伊藤祐介

2019/06/01 | カテゴリー:自然のはなし

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