2019年5月-118回 センザンコウ


世界で最も密猟されているといわれる動物の一つがセンザンコウ(Pangolin)だ。サバ州では今年2月には30トンものセンザンコウが押収された。2017年5月には身体を覆っている松かさ状ウロコだけで700キログラムが押収されている。もちろん絶滅が危惧されており、保護活動が進められているが焼け石に水の状況だ。
センザンコウは東南アジアとアフリカに分布する。マレーシアやインドシナ、インドネシアに生息するのはマレーセンザンコウと呼ばれる種で、体長は40〜60センチ、体重は10キログラムほどでアフリカのものより小振りだ。鋭い前足の爪をもつが歯はなく、蟻塚を壊しながら長い舌を使ってアリやシロアリを食べる。
生態が似ていることを理由に南米のアリクイに近い種とみなされてきたが、最近の遺伝子研究などを通じてむしろコウモリやウマ、ネコに近いことがわかってきた。
センザンコウといえば、アルマジロと混同する人が多い。アルマジロはナマケモノやアリクイと近い種で、南米で独自進化した動物の仲間だ。皮膚はまさにプロテクターのようで、センザンコウのようにウロコ状にはなっていない。頑丈な外見と丸まって身を守るという点ぐらいで、センザンコウとアルマジロは他人の空似である。
アルマジロの甲羅もピストルで撃った弾が跳ね返ってきて負傷したという話があるくらい頑丈なのだが、センザンコウのウロコは立てて防御姿勢をとることができる。ウロコは非常に硬く、先端は尖り、かつ薄い刃物のようになっている。
センザンコウが密猟される理由は漢方医学の世界で効能が喧伝されているためだ。関節炎、けいれん、癲癇などの治療効果があると信じられているが、科学的な根拠はまったくない。ウロコは毛が変化したもので、ケラチンというタンパク質でできており、爪と同じなのだ。迷信を信じている方々には、ウロコの代わりにセンザンコウの爪の垢でも煎じて飲んでもらいたいものである。

伊藤祐介

2019/05/04 | カテゴリー:自然のはなし

このページの先頭へ