2019年8月-121回 ヤモリ


コンドミニアムの高層階であっても、どんなに戸締まりをしっかりしていてもいつの間にか現れるヤモリ(Gecko)。目にしやすいのは、チッチッチと鳴くホオグロヤモリだ。全長は8〜15センチ。寿命は約5年といわれる。マレー語名はチチャック(Cicak)で、この鳴き声からとったものだ。
英名はゲッコーと鳴く30センチにもなる大きなヤモリの鳴き声に由来する。日本人にはこれがゲッコーでなくトッケイと聞こえたらしく、和名はトッケイヤモリとなっているのが面白い。腹に溜め込んだ空気を吐き出すことでこの大声が出せる。
ヤモリといえば、忍者のごとく天井や垂直の窓ガラスの上に貼り付いているのを思い浮かべるだろう。ヤモリが天井や垂直の窓ガラスの上を歩けるのは足の裏に趾下薄板(しかはくばん)という器官があるためだ。
趾下薄板にはナノメートルという極小サイズの毛が50万本も生えており、これが天井やガラスの分子との間でファンデルワールス力を発生させ、この力によって吸盤のようにくっつく。ファンデルワールス力自体は小さなものだが、それが集まれば壁に貼りつくだけの力になる。ヤモリの体重が軽いから可能なワザだ。体重の50倍以上の重さを支えることができるといわれる。
ホオグロヤモリやトッケイヤモリなどのヤモリ科の特徴の一つに、まぶたを閉じることができないというものがある。彼らは眼球の乾燥を防ぐために時折舌で舐めている。ただヤモリ下目の中には、まぶたが閉じられるヤモリもいるのでややこしい。
この種のヤモリは趾下薄板が発達していないので天井やガラスに貼り付くことができないのだが、これではヤモリらしさは皆無。「ヤモリと名乗るのはまかりならん!」と他のヤモリに叱られたためかどうかは知らないが、トカゲモドキ科というなんだかパチモノのような不名誉な名前が付けられている。なおヒョウモントカゲモドキはペットとして人気だ。

伊藤祐介

2019/08/01 | カテゴリー:自然のはなし

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