2019年9月-122回 サンゴ


サンゴ(Coral)は刺胞動物という動物で、似ても似つかないがクラゲの親戚筋に当たる。簡単にいえばクラゲが岩などにくっつき、群れをなして炭酸カルシウムの骨格を発達させると、僕らがイメージする「サンゴ」となる。僕らはたくさんのちっちゃいサンゴが住む団地を「サンゴ」と呼んでいるのだ。
サンゴが動物である証拠にちゃんと口もあり、触手でエサを捉えて食べる。性別もあって有性生殖もする。僕はティオマン島でダイビング中に産卵に出くわしたことがある。無数の卵と精子が海中を漂い海面を覆ったため海水が濁って見えるほどだった。
サンゴは褐虫藻という藻類と共生している。サンゴ自身でもエサをとるが、褐虫藻が光合成を行なって生じた栄養を受け取っている。まるで農園を自らの体内に持っているようなものだ。褐虫藻を維持するためには光が必要なので、光の届かない深みではサンゴは育つことができない。
褐虫藻は高い海水温にも弱い。褐虫藻が死滅すると色が抜けるために白い骨格部分が丸出しになる。これがサンゴの白化だ。この状態が長く続くとサンゴは栄養不足で死んでしまう。海水温上昇に伴うサンゴの白化は世界各地で報告されている。
弱者イメージがすっかり定着しているサンゴだが、最近豪州の研究で、白化を免れたサンゴが翌年、再び海水温が上昇した際に抵抗力が強まることが分かってきた。他の研究でも、白化減少が起きている間にサンゴが有害な活性酸素発生を食い止めるために葉緑体を分解して無害化したり、異常化した褐虫藻を消化・吸収して営養として生き延びていることも分かってきた。
僕は随分以前にティオマンで大規模なエダサンゴの白化を目撃したことがあるが、その翌年きれいに元に戻っているのをみて驚いたことがある。サンゴはじっとしているが故に弱者視されがちだが、実際は環境の変化に懸命に適応しようとしており、思いのほか逞しい動物なのだ。

伊藤祐介

2019/09/01 | カテゴリー:自然のはなし

このページの先頭へ