2012年1月-タイヨウチョウ
最も熱帯らしい鳥といわれれば、僕はまずタイヨウチョウ(Sunbird)を思い浮かべる。和名は英名を直訳したものだが、その名の通り熱帯の明るい日差しに似合う色鮮やかでメタリックな羽色の美しさでは他を寄せつけないものがある。見る角度が変わると色が違って見えるので、図鑑の写真によってはかなり色の違いがあったりする。
スマートなスタイルと細長いクチバシの特徴的な姿も日本の野鳥には見られないものだ。さらに重要なのがあまり希少すぎないということで、マレーシアの野山に行けばわりと簡単に目にすることができるし、どういう訳だか人をあまり恐れないようで数メートルほど離れたところを飛び交ったり、テーブルに置いたオレンジジュースを飲みに来たりするので観察がしやすいのだ。クチバシが細長いのは花の蜜を好んで吸うためで、独特のストロー状の舌を使って吸うように舐めながら花木の間を移動する。蜜の他にも小さな昆虫を捕食するようで、僕はホオアカコバシタイヨウチョウ(Ruby-cheeked Sunbird)のオスが白いカイガラムシ(たぶん)をメスにプレゼントしているのを間近でみた。
このタイヨウチョウをハチドリと間違う人がたまにいる。タイヨウチョウはアジアやアフリカ、オーストラリアに住むが、ハチドリはアメリカ大陸に生息する。タイヨウチョウのサイズは9〜22センチと幅があるが、小さいものならハチドリと同じくらいで、同様にスマートな身体と細長いクチバシをもち、花の蜜を好んで吸う。これは同じような生活環境に置かれたために似た方向に進化した(収斂)ためだ。タイヨウチョウはスズメ目で、ハチドリのようにホバリングしながら蜜を吸うことはなく、しっかり脚で枝をつかんで蜜を吸う。反対にハチドリはアマツバメ目で、脚が弱いのでほとんど歩くことはできない。他人の空似というわけで先月紹介した東南アジア代表のテナガザルと南米代表のクモザルの関係に似ているのだ。なおタイヨウチョウの名にふさわしい絢爛豪華な羽色をしているのはオスだけで、メスはだいたいどの種も目立たないウグイス色をしている。つまりメスの方がオスをみつけることになっているのだ。タイヨウチョウはたいていカップルで行動しており非常に仲がいい。こういう点でも見ていてほほ笑ましい鳥だ。
2012年01月05日
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2011年12月-テナガザル
タマン・ネガラなどのジャングルを早朝歩いていると、語尾を上げるような「ホーワ、ホーワ」というテナガザル(Gibon)の声が響き渡る。声を上げてなわばりを確認しているようで、鳴き声をまねるとしばしば反応してくるので面白い。
たまに「どこのどいつがオレ様の縄張りに勝手に入ってきたのか」と仁義を切るため(?)近くにやって来ることがあるが、だいたいはジャングルの高いところにいるので声はすれども姿は見えずということが多く、まるで声のブッポウソウだ(ブッポウソウの声の主は実は赤の他人のコノハズク)。
飼育されているテナガザルを何度か抱かせてもらったことがあるが、あの細いからだを包むフワフワの毛は非常に細く、やわらかな綿毛のようで気持ちいい。湿度の高いジャングルで暑くないのかとも思うのだが、よく考えてみるとジャングルの夜は案外冷えるし、細身の身体は体温を逃がしやすそうだ。同じ種の動物でも寒冷地ほど大型化するというベルクマンの法則は、裏を返すと小さいものほど体温維持が難しいことを示している。雨水の浸透を防ぐ意味でも、あの綿毛のような毛がいいのかもしれない。その証拠に小型のサルは例外なく綿毛のような柔らかい毛をしている。
僕はフィリピンでメガネザル、マダガスカルでネズミキツネザルといったリスかネズミのように小さい原始的なサルを何種類か触らせてもらったことがあるが、いずれも体毛がふわふわだった。体温維持のための綿毛状の毛は彼らにとって必要なのだ。テナガザルは小型で腕がやたら長い外見から下等な霊長類と思われがちだが、実はヒトやオランウータンと同じ類人猿だ。たまにその姿格好からクモザルと混同する人がいるが、系統的にはクモザルは新世界ザルであって他人の空似にすぎない。同じような生活環境に置かれたために似た方向に進化したわけだ(収斂という)。見た目で最も違う点はテナガザルが尾を持たないのに対して、クモザルが腕のように巻き付けることができる長い尾を持っている点だ。もう一本の腕を持っているようなものなので、木登り競争をさせたらテナガザルはクモザルに負けるかもしれない。木登り巧者どうしでどちらが勝つか、誰かに是非実験してもらいたいものだ。
2011年12月05日
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2011年11月-キツツキの巻き その2
先月号「キツツキ(Woodpecker)」の話の続き。フクロウやオウムの仲間もそうだが、キツツキの足は対趾足といって、足の指が前向きと後向きに2本ずつ付いている。第一、四の指が後向き、第二、三の指が前向きだ。これによってふとんを干すときに使うふとん挟みと同じように、両側からガッチリと木の枝や幹を掴むことができる。特に木の幹に穴を開けるのを商売としているキツツキにとっては、この対趾足は重要だ。
キツツキの場合は単にとまるだけでなく、穴を空けてエサの芋虫をほじくり出したり巣を作らなければならない。身体の小さい鳥のように横向きになって幹にとまってコツコツやると木目に逆らう形となるが、縦にとまって木目に沿ってクチバシを打ちこむと、木が木目に沿って割れてくれるのだ。薪を割るようなもので、このほうがよほど作業が合理的にできる。体重を後ろ向きの指に預けられる対趾足はキツツキが幹に沿って縦にとまるには必要なのだ。また強い力でクチバシを堅い木に打ち付けると反作用が働くので、しっかり足場を固めないとエネルギーがロスする。
ここで威力を発揮するのが、ちょっとやそっとで曲がらないキツツキの堅い尾羽である。いわばつっかえ棒の代わりであり、これとしっかりした両足と合わせて3点確保というわけで、反動に負けない安定した姿勢で穴開け作業ができるのだ。
さてそこで疑問に思うのだが、僕がよく行くクアラセランゴール・ネイチャーパークでよく見かけるズアカミユビゲラ(Common Flameback)は、その名のとおり指が3本しかない。第一指がなく、第四の指だけが下を向いているわけだ。あまり使わないために退化したともいわれるが、どうしてミユビゲラの仲間だけが3本指なのだろうか。他のキツツキよりも横木にとまることが極端に少ないといった生存条件があったのかもしれない。
前述のクアラセランゴールでは、ズアカミユビゲラのほか、タケアオゲラ(LacedWoodpecker)やチャガシラコゲラ(Brown-capped Woodpecker)が常連さん。マレーシア森林研究所(FRIM)では、いつもモリアオゲラ(Crimsonwinged Woodpecker)を観ることができる。
2011年11月05日
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2011年10月-キツツキ その1
キツツキ(Woodpecker)という鳥は、バードウォッチングの初心者にお勧めの鳥だ。第一には発見しやすいという点。コツコツという木を叩く音(ドラミング)はかなり遠くまで聞こえる。音のする方角を観察していると、太めの木の幹をコツコツ叩きながらしながらズリズリと上の方に上がっていくのを容易に見つけることができるのだ。
第二に穴開け作業に没頭しているので警戒心が薄く、小さな鳥のようにちょこまか移動しないので双眼鏡で捉えやすい点。移動も幹に従って垂直方向とほぼ決まっているので、観察対象としてうってつけだ。加えてマレーシアにいるキツツキはかなりカラフルな色をしているので見た目にも楽しい。マレーシア森林研究所(FRIM)によくいるモリアオゲラ( Crimsonwinged Woo dpecker)などは赤と黄色の派手な頭の毛をおっ立てており、まるでパンクのにーちゃんである。鳴き声もギャーギャーと「シャウト」している感じで、「森のパンク野郎」と僕は勝手に呼んでいる。
ただキツツキ探しの手掛かりになるドラミングについては、聞いたことのない人にとってはなかなか想像できないということが、先日友人をタマン・ネガラに案内してみて分かった。ドアをノックするようにコン、コンとゆっくり叩く場合もあるが、たいていは口マネできないほどの高速打ちで、ほとんどタララララ・・・という感じ。何度も「あれがそうだよ」と言っても友人はなかなか判別できなかった。我々はエアコンの音やエンジン音を普段は聞き流しているものだが、キツツキの規則正しいドラミングもそのたぐいなのだろう。
さて読者の皆さんは、キツツキという名の鳥が存在しないのをご存知だろうか。○○キツツキというのは皆無で、いるのは○○ゲラばかりだ。様々な説があるが、元々「テラツツキ」と呼ばれていたのがいつの間にか「ケラツツキ」となり、頭の「ケラ」が残って「アカゲラ」とか「クマゲラ」になったなどといわれている。キツツキに穴開け作業で脳震盪にならないための頭蓋骨のショック吸収構造があるのはよく知られているが、対趾足という足の指が前向きと後向きに2本ずつ付いている点も特徴の一つである。ところがなかには指が3本しかないキツツキもいるので話がややこしくなってくる。その話は次回に。
2011年10月05日
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2011年9月-ブタオザル
東南アジアでオランウータンに次いで大型の霊長類はブタオザル(pigtailmacaque)だ。ブタのしっぽのようにチョロリとした尾が名前の由来。成長したオスは中型犬ほどもあり、体重は10キロにもなる。力が強く賢いので東南アジア一帯ではこれを飼いならしてヤシの実をとるのに使う。一回り小柄なカニクイザルだと力がないのでヤシの実をうまく取れないらしい。
野生でも人馴れしていれば、クアラルンプールの近くではアンパン・フォレスト近辺で頻繁に見ることができる。毎日やってくる大勢の観光客にエサをねだるのだが意外と行儀がよく、カニクイザルのように強引にかっぱらっていったりはしない。
ようだ。なかには馴れ馴れしく人の肩に乗ってくる若いサルもいる。観光客の中にはどちらがサルか見分けがつきにくい人もいるので、僕は声をかける時には必ず「あなたの方が多分人間ですね」と確認するようにしている(ウソウソ)。フレイザー・ヒルに登るくねくね道の途中でたまにみかけるし、先日はマレーシア森林研究所(FRIM)のトレイルでもみかけた。生息範囲が広く出くわす可能性が高いのだが、あまり人馴れしていないヤツには気をつけたほうがいい。
僕はオランウータンのリハビリテーションで有名なサバ州セピロックのジャングル・トレイルを歩いている時、うっかり人馴れしていないブタオの群れとモロに鉢合わせしてしまったことがある。気が付くと僕を中心として半径6〜8メートルほどの範囲にオスメス子供合わせて8頭ほどいた。
メスや子供はよほど驚いたのか完全に固まってしまっており逃げようともしない。ようやく身体がひと回りでかいボスとみられる1頭が肩をいからせながら近づいてきて、威嚇のためダッシュしてくる素振りを何度か繰り返した。角刈り頭のいかつい形相で、仁侠映画にでてくる高倉健のようだ(古い?)。さすがに「死んでもらいます!」とは言わないが、「噛みつかせていただきます!」とか「引っかかせていただきます!」と言いそうな険悪な雰囲気だ。
僕はこの時点で数キロの山道を歩いてスタミナを消耗し、しかもヒルに何カ所か吸われ血の気が失せていたこともあって、あえて逆らわずおとなしく後ずさりしてその場を退散。こうしてブタオのボスと僕の間で繰り広げられたであろう凄絶な死闘は不発に終わったのだった。
2011年09月05日
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2011年8月-ウツボカズラ
本連載もおかげさまで丸2年。今回、初めて植物を紹介するのだが、普通の植物では面白くないので、
マレーシアが本場であるウツボカズラ(Pitcherplant)に登場願うことにする。特にボルネオはウツボカズラのメッカで、確認されているものだけで30種以上にのぼるそうだ。キナバル山などを訪れる人はぜひ観察して欲しい。
ウツボカズラはご存知のように食虫植物の代表格で、捕虫器とよばれる袋状に変形した葉におびき寄せた虫を落とし、酵素を含む液体で消化し栄養にする。捕虫器の内部は虫が這い上がれないように上手くできており、ツルツルだったり下向きの返しのトゲを生やしたりしている。フタは雨などが入らないようにするためのもので、開けたり閉じたりはしない。僕が自宅で育てているウツボカズラは捕虫器の長さが6センチ、穴の直径が3センチ程度の可愛らしいものだが、ボルネオでは握りこぶしが入るビッグサイズのものをあちこちでみかけた。2009年にフィリピン南西部パラワン島で見つかった世界最大級の新種などは、捕虫器の直径が30センチほどもあるというのだから驚きだ。
ところでウツボカズラの捕虫器がどのように成長するのか御存知だろうか?
僕が育てているウツボカズラを例にとると、まず株からツルが細く上に伸び、その先端に葉芽に似た形状のものがしだいに成長してきて、やがて重みで垂れ下がってくる。これは紙風船のようにペタンコに折り畳まれた状態の捕虫器で、十分に育つとやがて膨らんで袋状になるのだ。最初のうちは袋の中はカラッポで、十分に膨らんでからじわじわと消化液が出てくるようだ。問題はこのツルの途中にできる葉のように見える部分だが、よく観察すると葉脈がない。ここはつまりニセの葉で、捕虫器ができる前からあるために一見すると葉の先がニューと伸びて先端に袋をつけているように見えるのだ。ニセの葉であっても光合成はできるので、これならば栄養の少ないジャングルであっても運良く日の当たる場所であればラッキー。
ウツボカズラは捕虫と光合成の両面作戦で厳しい環境を乗り切ろうとしているとてもカシコイ植物なのだ。なんだかダンナの給料が上がらないので住宅ローン返済のために奥さんがパートで稼いでいる共稼ぎ夫婦のようにみえなくもないが、ガンバッテ生きているという感じが何ともいじらしい。
2011年08月05日
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2011年7月-コウライウグイス
街路樹の間を低空飛行し、ウグイスにも似た鳴き声を発するコウライウグイス(Black-napedOriole)。黄色い羽と目の部分の黒いライン(眼過線)の派手なコントラストで目立つため、野鳥に詳しくなくても「ああ、あの鳥ね」と思い当たる方も多いだろう。メスは緑がかった黄色の羽毛で覆われている。名前にウグイスとついているのだが、同じスズメ目でもウグイスとは系統が違う。コウライウグイスのほうは体長26センチほどもあり、15センチ程度のウグイスとは体形も大きく異なっている。
シベリアや中国、朝鮮半島に生息している個体がたまに日本に渡ってくるのでこうした和名がついたようだが、ウグイスのように真ん中にアクセントを置いて「ホーヒーヨ」と鳴くので、「ホーホケキョ」に聞こえなくもない。「ホヒヨ」とか「ホケキョ」、「ホキョ」と短く鳴くこともある。疲れていると「もういいよ」と聞こえ、腹が減っていると「トルティーヤ」と聞こえるので、野山を散策している際に自分の体のコンディションが分かるので重宝だ。
英名を直訳すると「頭の後ろが黒いオリオール」ということになるが、米メジャーリーグの「ボルチモア・オリオールズ」の名前の由来となった「オリオール」のほうはムクドリモドキ科の鳥で、和名ではボルチモア・ムクドリモドキと呼ばれ、これまた別系統だ。姿格好が似ているので両方ともオリオールとなったと言われているが、羽が黄色と黒のツートンという点を除くと全然似ていない。動植物の名前は結構いい加減につけられているのだ。ちなみにボルチモア・ムクドリモドキの方はチーム名に冠されるぐらいだから彼の地ではメジャーな鳥なようで、メリーランド州の「州鳥」になっている。なおマレーシアには生息していないが頭全体が黒いズグロコウライウグイスというコウライウグイスの近似種がおり、僕はスリランカで鳴き声を聞いたがまったく区別がつかなかった。
コウライウグイスの飛び方は波状飛行(バウンディングフライト)で、始終バタバタとはやらず、羽ばたいて上昇してはそのまま滑空し、また羽ばたいては滑空するというやり方だ。休憩を挟みながら飛べる点で省エネ効果がありそうだが、体重の割には飛翔力に乏しいため仕方なくやっているというのが本当のところのようだ。野鳥は飛び方にもそれぞれ特徴がでるので気をつけて観察すると面白い。
2011年08月04日
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2011年6月-ヤスデ
僕がマレーシアで出会って感動した生き物は数多いが、その一つがヤスデ(Millipede)である。世界には1万種ものヤスデがおり、「タマヤスデ」というダンゴムシの親分みたいなのや、「ババヤスデ」という装甲車のようなユニークな輩もいるのだが、ここは指ほどの太さで全長が20センチ以上にもなる「マレーオオヤスデ」と和名で呼ばれる巨大ヤスデを代表に挙げよう。
日本にいるふつうのヤスデが1〜2センチ程度であることを考えるといかに大きいかがわかるだろう。こいつがマレーシアのジャングルに行くと湿った場所ならどこにでもいるのだ。危険を感じると丸くとぐろを巻いて円板状になる。一見するとムカデに似ているが、ムカデが肉食なのに対してヤスデは腐葉土やキノコなどを食べるおとなしい生き物。もちろん咬みついたりすることはない。もう少し世間で好意的にみられてもいい生き物なのだが、脚がウジャウジャある外見が災いし視覚的に嫌われているようだ。ムカデが一つの体節から1対の脚が出ているのに対して、ヤスデは2対出ているので同じ体節の数ならば、脚の数は2倍あることになる(だから倍脚類という)。
日本語の漢字表記はムカデが「百足」なので、ヤスデは「二百足」と書くかと思いきや「馬陸」と書く。「馬陸」は中国語源で、中国では「千足蟲」ともいう。しかし昔、中国でヤスデのことを「百足」と呼んでいたという話もあるのでややこしい。外見が似ているので昔の人が両者を混同していたことは十分考えられる。ちなみに英語名についている「Milli」はラテン語源で千を表すので、「千足蟲」はこれに倣ってできた外来の呼び名なのだろう。ヤスデの脚の数は最も多い種で750本ほどあるが全般的には数十本から400本程度なので、「千足」はちょっとさば読み過ぎだ。
ヤスデの評判が芳しくないのには、全く人畜無害とはいえないという事情がある。2010年11月には大発生したヤスデが線路を広く覆ったために列車が運休したという事件が鹿児島県であった。ヤスデの油っぽい体液で列車の車輪が空回りして走れなくなったというのだ。またヤスデのなかには体内に青酸物質を溜め込んでいるものがあり、退治しようと熱湯をかけたり火で炙ったりするとガスが発生して気分が悪くなったりするという。油流しに毒ガス攻撃というのだから、これではまるで忍者のようだ。日本の小さなヤスデでもこうだから、マレーシアのオオヤスデをつぶしたらトンでもないことになるかもしれない。ここはやはり手の平の上で優しく遊ばせておく程度にしておこう。
2011年06月05日
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2011年5月-ミドリカラスモドキ
宏観異常現象とよばれる現象がある。大地震の直前に現れる震源地上空の発光や井戸の水位変動、超低周波音、動物の異常行動といったものだが、地震との関連性が指摘されるものの科学的には解明されていない。ナマズが暴れるという伝承などもその一つで、スマトラ沖大地震・津波の際には、ゾウが危険をあらかじめ察知して人を救ったという話もある。
先の東北地方太平洋沖地震の際にもカラスが夜中にカーカー鳴いていたという報告があるそうだが、マレーシアにもカラスはいるが、カラスという名のついた鳥がほかにもいるのでこれに注目したい。
家の近所でよくみかける「ミドリカラスモドキ」(Asian Glossy Starling もしくはPhilippine Glossy Starling)がそれだが、ムクドリ科の20センチほどの光沢のある濃緑色の羽をした鳥で、市街地でエサを漁っていたりする様子が小さなカラスを連想させるためにこの名が付いたのだろう。鳴き声はピーッという感じでカラスとはまったく違う。幼鳥は背中がこげ茶色で黄色かかった腹には斑紋があり、これまた親とは似ても似つかない。赤い目が特徴的で体色がマントのように黒っぽくみえることもあり、昔の吸血鬼映画にでてきた赤いコンタクトレンズをつけて目を血走らせていたドラキュラを思い出す。僕は、彼らが不気味な外見の陰に「本家」のカラスを上回るような得体のしれない秘められた能力をもっているのではないかと秘かに期待しているのだ。
ところで、残念なのは名前の「モドキ」だ。せっかくクールな外見をしているというのに、このヒョーキンな響きの言葉がついているのがまことにアンバランスで惜しい。本家本元とは似て非なるものという意味で名付けられたものといえば「ニセアカシア」とか「ゴミムシダマシ」などがあるが、もとよりどちらが本家でどちらが分家ということは動植物の世界にはないので、人間に勝手に「ニセモノ」だと決め付けられてご本人たちはさぞかし迷惑しているだろうと同情を禁じえない。「モドキ」はまだいい方で、動植物の世界では罪もないのに「ナマケグマ」「アホウドリ」「バカガイ」などと差別的な呼ばれ方をされているもっと気の毒な連中が大勢いる。虎視眈々と人間に復讐する機会を伺っているのかもしれないのだ。
2011年05月12日
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2011年4月-イノシシその2
前月号に続いてイノシシ(wildboar)の巻の第二弾。マレーシアのイノシシも人を襲うことがあるのは時々新聞でも報じられているので明らかなのだが、餌が豊富にあるためか,はたまた温暖な気候がなせる技なのだろうか、日本のイノシシに比べると格段に温厚な気がする。
クアラルンプール東部のアンパンの森林では、れっきとした野生のイノシシが餌付けされている場所がある。ボランティアの人によるとイノシシは3つの群れから成り、薄暗くなった午後7時半ごろから出てくるのだそうだ。
先日僕が見に行った際には、全部で11頭が現れた。大勢の見物人がいるにもかかわらず薮から次々と姿を現し、ウリボウ(イノシシの子)も3頭ほど含まれていた。投げ与えられたパンの耳やピーナッツをガツガツ食い始めたのだが、やがて「もっとおくれよ」とばかりに頭を振り振りアピール。常連さんとおぼしき人たちが近寄って手の平に載せてさしだすと、なんとイノシシが飼い犬のように手の平の餌を食べ始めたではないか。隣の人が手を伸ばして頭を撫でても気にする様子もなし。
聞くところによると華人たちはイノシシを触ると何かの御利益があると考えているのだそうで、ナンバーズくじなどが当たりますようにと願掛けて触っているのだという。そのせいか見物人の大部分が華人で、インド系はちらほら、マレー系は皆無だ。
さっそく僕も彼らに交じってイノシシに近寄って、ほおやひたいのあたりを撫でてみる。泥にまみれているものの体臭は感じられず、決して不潔な動物ではないということが分かる。皮膚がとにかく堅い、というのが触った際の第一印象。剥いだ木の皮のようで生き物のような感じがしない。面の皮が厚いというのはまさしくこのことで、毛もタワシのようにゴワゴワで触っていてあまり気持ちのいいものではない。イノシシには毒ヘビの毒が効かず反対に毒ヘビをムシャムシャ食べてしまうとは聞いていたが、実際に触れてみて事実に違いないと思った。ただし鼻先だけは豚と同じくピンク色の皮膚がむき出しなので、咬まれどころが悪ければ毒がまわる可能性はあるだろう。
近くでみると以外と目が可愛らしくて賢そうだ。リラックスしてエサをもらっているようでいながら、きちんと周囲の安全を確認している様子が窺える。猪突猛進といった単細胞な性質で怖いという印象だったイノシシに対する見方が変わってイノシシ・ファンになった。
2011年04月05日
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