2017年11月-この人のセニョ〜ム 林 宗一郎さん

林宗一郎さん
能のもつ普遍的なメッセージを美学とともに!表面的ではなく、
「心を尽くす」姿を見せたい。

1979年10月28日、38歳。能楽師。1625年から続く観世流シテ方の家に生まれ、3歳で初舞台に立つ。父は13世・林喜右衛門(きえもん)氏。各地で公演を重ねる傍らでより多くの人に能の素晴らしさを伝えるべく初心者向けのレッスンや講演活動も行っている。今回、日本大使館と国際交流基金の招きで自身初となるマレーシア公演のために来馬。セニョームのインタビューに答えてくれました

9月26日、KLCCのペトロナス・フィルハーモニック・ホールで行われた能舞台『船弁慶』(ふなべんけい)公演のために来馬した、林宗一郎さん。座頭として準備を進める中、海外に日本文化を広めたいという思いについて聞きました。
「能を世界共通の価値を表現する芸術として、さらに高めていきたいと思っています。これまで海外公演を何度か行ってきました。特に印象的だったのが欧州を周った時のこと。日本人でも理解するのが難しいとされる演目を、外国人の観客が涙を流して見ていたのです。言葉の壁を越えて、万国共通で人間が抱く感情の強さにあらためて確信を深めました」。
今回、マレーシア公演の演目として選んだ船弁慶は、『平家物語』、『吾妻鏡』(あづまかがみ)を基にした物語。平安時代末期、源氏と平氏の2勢力の争いは源義経の活躍によって源氏側が勝利しますが、それを良く思わなかった大将で実の兄である頼朝との間に亀裂が入ります。義経が恋仲である静御前(しずかごぜん)と別れて落ち延びる道中、滅んだ平家の亡霊が襲い掛かってきます。
「作品は静御前の美しい舞いと亡霊の荒々しさの対比が際立ちエンターテーメント性に溢れるだけではありません。権力争いのせいで兄弟の絆が壊れてしまう、恋人との仲も引き裂かれてしまう・・・。悲しいけれど同じようなことが今日も世界のどこかで起きているでしょう。普遍的なテーマ、メッセージをもつからこそ、海外で演じる意味があるのです」。
国内では繊細な動きからの静止や、緻密につくり込まれた音との一体感などが高く評価されている林さん。外国公演の際にはどのようなことを意識しているのでしょうか。
「外国人が見るからといって、分かりやすくしようと所作や立ち振る舞いを変えたりはしません。これぞ能という、日本でやっているのと同じ形で勝負したいし、そのほうが伝わると思っています」。
日本人は思いを表現するのが苦手といわれますが、林さんは私たちの美しさはむしろ「つつましさ」にあるのではないかとも言います。
「表面では高まる思いを出さないようこらえるのだけれどやがて奥底からにじみ出て、結果として相手により深く伝わる。私はこれを『心を尽くす』と言い表しています。外国で暮らしている皆さんにも日本古来の美意識をとどめ置いていただければうれしいです」。

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