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2022年4月-この人のセニョ〜ム ケネス チュン さん
- 2022/4/1
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日本人のほとんどが手にしたことがある「おりがみ」。正方形の紙が手元にあれば、無意識に飛行機、鶴、風船、やっこさんなど、一枚の平面紙から立体的な何かを作ることができるだろう。おりがみは日本の伝統工芸だと思っていたが、世界の未来科学に大きな影響を及ぼす技術だったとは…。
ケネスさんの母方の祖父は太平洋戦争の時に来馬した日本人将官の通訳を務め、終戦後も祖父一家と将官夫妻の交流は続いた。彼らからおりがみを習った母が教えてくれた折り鶴が、7歳のケネスさんとおりがみとの出会いだ。アメリカで専攻した電気工学の教授の趣味兼研究課題が「Origami」で、数理的、科学的視点からおりがみへの興味が深まった。
おりがみを展開すると現れる複雑な折り線(Crease Patterns)に着目し、70年代より数理的に研究する数学者や科学者が現れた。例えば、柔らかくて破れやすい紙も折ることで強固な形となったり、小さな力で動くなど、紙にはなかった性質が生まれる。この性質を紙以外の素材で製品に応用、特に工学の分野で注目され、折り畳み式の傘や車のエアバッグ、宇宙船の太陽光パネルにもおりがみの技術が採用されいる。効率よく折り畳み立体化する技術は心臓外科手術や細胞における分子構造にまで応用され、医療、製薬など生命科学分野でも大きな注目を集め研究されている。
多くの人を取材し、当時の写真や資料を收めた『Postcards from the South』は、ヒューマンドキュメンタリーであり、写真集だ。話し手の母語(マレー・中国語)+英語で書かれていることに、語り手への敬いとマレーシア愛を強く感じる。
「おりがみの可能性は無限、おりがみは未来をつくる」と、ケネスさん。おりがみの技術は身近な生活雑貨や建築、ファッションなど、数えきれないほどの分野で活用されている。先進国のいくつかの国では、おりがみを取り入れた数学や幾何学の授業が小中学校で行われているほか、おりがみに特化した科学・数理コースを設ける工科大学もある。
ケネスさん自らが立ち上げた「おりがみアカデミー」や「マレーシアおりがみ協会」は、マレーシア人におりがみの芸術的魅力と無限の可能性を秘める科学的知識を広めるためのワークショップや、大学・企業での公演を行っている。工芸としてのおりがみ指導も行い、マレーシア人おりがみアーティストを育成。マレーシアらしい伝統工芸や食べ物、動物などをおりがみで再現し、その作品数は100以上にも及ぶ。
おりがみから発展したテクノロジーは進化し続ける。マレーシアの教育の場にもおりがみを導入し、国内の科学・医療技術が独自の発展を遂げることができるよう願いを込めて、ケネスさんは日々研究を重ね、人材の育成に勤しんでいる。
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