ぶどう酒百味旅 ~最初のひとくち 想いの滴~ 第20回

〜最初のひとくち 想いの滴〜

【紫音のおすすめワイン】

【ワインを愛する理由】

「もう駄目だ」。2021年、飲食店をはじめ多種多様な自営業者は本当に苦しみました。私自身「もう駄目だ」という状況に何度となく追い込まれ、肉体、精神、金銭、全てにおいて「崖っぷち」での戦いでした。そんな苦しい時期を乗り越え、今こうしてコラムを書かせていただけるのも、MCO期間中にご注文をいただいたお客様のおかげです。また、そのような期間にもかかわらず、変わらずこのコラムを掲載していただき、Facebookにてお店情報を発信してくださったセニョームのおかげです。この場を借りて皆様にお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

世界中の人々にとって厳しかった2021年。それでも、世界各地の畑でブドウが育ち、たくさんのワインが造られました。ブドウが実る一年の周期は、よく人生に例えられます。春の訪れとともに新芽が生まれ、花が咲き、実を結び、いずれ全ての葉は大地に帰る。ブドウはその生涯のなかで「ワイン」という産物を残してくれます。それは後年、人々に幸せや笑顔を与えてくれます。私たちもいずれ死に、消えてなくなります。それでも、家族や友人の心に何かを残せるかもしれません。ワインを飲みながら、亡くしてしまった大切な人を思い出す。幸せな時間、ワインと共に。

【ワインが愛される理由】

ワインが他の酒類と違うところ、それはヴィンテージ(生産年)があることです。そのワインに使われたブドウの育った年がラベルに記載されています。春に芽を出したブドウの実は、収穫の秋を迎えるまでの間、長い時間をかけてゆっくりと成長していきます。その時間のなかで、風が吹き、雨が降り、太陽の光が降り注ぎ、それら自然の恩恵に育てられたブドウの実は、収穫の喜び溢れるなかで摘み取られます。ワインを造る際に水やその他水分を加えることはありません。絞ったブドウの果汁だけを発酵させて造ります。その年の、その年にしかない自然の恵みを凝縮したブドウの実からワインはできています。言い換えるならば、一本のワインには、そのラベルに書かれた年の「時間」が詰まっているのです。

一杯のワインを飲むことで、あなたは時間を遡ることができます。就職した年、結婚した年、マレーシアに来た年、頑張りぬいた年、悔しかった年、絶対忘れられない思い出の年。その年のワインを開けてみてください。あなたにとっての大切な時間が、そのボトルの中にあります。忘れかけていたものが、そこにあるかもしれません。一杯のワインを飲み、あの日の自分を思い出す。一杯のワインが、あなたをあの時間に連れ戻します。いつの日か、2021年産のワインを楽しく飲める日が来るように、心から願っています。

【最後にひとこと】
ヴィンテージでワインを選ぶ。今回のコラムでお伝えしたかったことです。写真は’98年9月に自分のカメラでフランスの葡萄畑にて撮ったもの。

塩見 正道  プロフィール

元パプアニューギニア日本国大使館の公邸料理人。日本ソムリエ協会認定のソムリエでもある。現在、アラダマンサラ地区にて、葡萄酒百味処紫音を営む。「シェフ+ソムリエ×マレーシア」な日々を過ごす。

B-1-16, Block B, Jalan PJU 1A/20A, Dataran Ara Damansara, 47301 PJ
Tel: 03-7840 0632

関連記事

コメントは利用できません。

アーカイブ

ページ上部へ戻る