ぶどう酒百味旅 ~最初のひとくち 想いの滴~ 第21回

〜最初のひとくち 想いの滴〜

【スペイン リオハのワイン】

25年前、その青年の財布に金はなかった。あるのは夢と希望だけ。ワインが好きでやってきたヨーロッパ、ワインを追いかけた彼の旅。その最終目的地がフランスのボルドー。そこに彼はいた。安宿の薄暗い部屋で独り、バックパックから取り出したワインの本を読む。スペインの章を読み終え彼は本を閉じた。「まだ終われない、まだ日本へ帰れない。よし、スペインを目指そう」。 今回のコラムは、スペインについて触れてみたいと思う。スペインは何と言ってもブドウ栽培面積で世界第一位の国。様々な場所で多種多様なワインが造られている。そのなかでも特に高品質なワインを生み出している産地が「リオハ」。スペインの北西にあり、ピレネー山脈を北に越えればフランスのボルドーまで約400㎞の位置にある。高品質なワインの産地としてその歴史も古い。 19世紀後半、フランス中に発生したアブラムシによって国内すべてのワイン畑が壊滅的な大打撃をうける。すでに確固たる銘醸地であったボルドーのワイン生産者達もしかり。ワインが造れない。それでもあきらめない彼らは行動に出た。「よし、スペインを目指そう」。ボルドーから南に約400km、高度なワイン醸造の知識をもった彼らは、スペインのリオハに移り住んだ。

【ワインに合わせて】アヒージョ

日本人に人気のスペイン料理と言えば、アヒージョもその一つではないだろうか。海老やキノコといった食材をオリーブ油が入ったカスエラという名の陶製器でグツグツと煮込んだ料理。パンと一緒に食されることが多い。ご家庭やホームパーティーで作った経験のある女性陣も多いのではないだろうか。今回はこのアヒージョを美味しく作るためのコツを伝えたい。まず大事なことは、食材にしっかり下味をつけること。魚介類に限らず、きのこの場合も同じ。紫音の場合、塩・コショウ・ガーリックパウダーを食材にしっかり揉み込み、しばらく置いてから煮込み始める。もう一つ大事なこと、それはオリーブ油にしっかり塩を入れること。「ちょっと多いかな」と感じるぐらいの量でちょうどいい。神輿が祭りで鮮やかに舞うために必要なものは、屈強な担ぎ人達。塩は彼らのような存在だと思えばいい。

* * *

さて、フランスのみならずヨーロッパ中のブドウ畑を襲ったフィロキセラという名のアブラムシではあったが、その後対処法が考案され姿を消すことになった。とはいえ、ボルドーのワイン生産者達がリオハへ伝えた高度な醸造技術が消えることはなく脈々と受け継がれ発展し、今やリオハと言えば世界屈指の高級ワイン銘醸地としてその名を轟かせている。

【最後にひとこと】
金のなかった青年はその後紆余曲折な人生を経て、2014年に紫音を開業しました。

塩見 正道  プロフィール

元パプアニューギニア日本国大使館の公邸料理人。日本ソムリエ協会認定のソムリエでもある。現在、アラダマンサラ地区にて、葡萄酒百味処紫音を営む。「シェフ+ソムリエ×マレーシア」な日々を過ごす。

B-1-16, Block B, Jalan PJU 1A/20A, Dataran Ara Damansara, 47301 PJ
Tel: 03-7840 0632

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