オットット爺やのつぶやき 第139回 ほらほら、置いてきぼり食らうよ

オットット爺やのつぶやき

ほらほら、置いてきぼり食らうよ

中国政府が2月の旧正月の 「お年玉」用に配った 「デジタル人民元」画像(人民網)

電話普及率 先進国ほど高く、途上国は低い。世界各国の状況が書かれているさまざまな「年鑑」には、電力普及や鉄道敷設キロ数と並び電話普及率が統計指標に挙げられていた。「電話」とは固定電話のことで、「いた」と過去形にしたのは、途上国でも携帯電話が急速に普及した現在、経済発展の指標としてあまり意味がなくなったからだ。

日本の固定電話の世帯ベースの保有率は2017年には71.0%。しかし20代ではなんと5.2%、30代でも29.3%に過ぎない。独身はもちろん、結婚しても共働きが多いせいか、固定電話を持たない世帯が多い。

さてここから本題の「マネー」に移る。202010月、カンボジア中央銀行がデジタル通貨「バコン」を導入した、というニュースが流れた。中銀デジタル通貨の発行は、カリブ海のバハマに続き世界2番目。カンボジアでは通貨「リエル」の信用度が低く、流通する通貨は米ドルだった。「パコン」導入で、国家がようやく通貨発行の支配権を取り戻したことになる。

中銀発行のデジタル通貨と、ビットコインなどの「仮想通貨」とはどう違うのか。仮想通貨は、ネット上でユーザー同士が取引し通貨の裏付けはない。一方、クレジットカードや交通機関で利用する「電子マネー」は、法定通貨の代替物だが、直接銀行を介さない。

中国は試験的に中銀デジタル通貨を導入し、2022年の北京冬季五輪開催前に実用化する。中国では、巨大IT企業「アリババ集団」の「支付宝(アリペイ)」や騰訊控股(テンセント)の「ウィーチャットペイ」など、銀行を介さないショッピングが消費者に浸透している。すべてスマホ一つで取引できるキャッシュレス。

「中国の特色ある社会主義」でも、民間企業が都市部の雇用の8割、国内総生産(GDP)の6割を創出しており、共産党指導部には、巨大IT企業が金融支配しかねないという懸念を強めていた。中銀デジタル通貨の発行も、国家による巨大IT企業への支配を強化する狙いがある。中国政府は昨年末からアリババ集団を独占禁止法容疑で調査するなど規制を強化しているが、デジタル通貨発行もこの文脈で見ると分かりやすい。

日本はどうか。日銀は昨年、「デジタル通貨グループ」を設置し、導入に向けた実証実験を始めた。日本人の「現金信仰」は根強いものがある。キャッシュレス決済額の比率では、韓国(96.4%)、中国(60%)、シンガポール(58.8%)に対し、日本はわずか19.8%。一方「タンス預金」の総額は、50 兆円(2019 1 月)を越えたそうだ。

他人ごとではない。亡母は祝儀袋に紙幣を包むとき、わざわざ重いアイロンを出して、お札のしわ伸ばしをしていたっけ。こんなことをするのは、日本人ぐらいのものだろう。(了)

オットット爺や  プロフィール
1948年生まれ。通信社特派員として香港、モスクワ、台北などで報道。退職後は客員論説委員として国際政治を論じる一方、都内某大学で客員教授を務める。

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