オットット爺やのつぶやき 第148回 尖閣の「都有化」は万死に値する

オットット爺やのつぶやき

尖閣の「都有化」は万死に値する

2012年米シンクタンクで 演説する石原慎太郎東京都知事 (NHKニュースから)

石原慎太郎氏が2月1日、89歳で死去した。彼が東京都知事時代、尖閣諸島(中国名 魚釣島)を「国有化」させ、日本と中国の対立を煽ったのは、ちょうど10年前の2012年。強国化する中国に対する民衆のコンプレックスを掴み、それを「反中」へ巧みに昇華させた稀代のデマゴーグ(煽動的民衆指導者)だった。

石原には「国有化が筋」という認識が最初からあったのだ。その目的は何か。領土問題という妥協不可能なテーマを設定することによって、日中関係を緊張させ、中国から強硬姿勢を引き出し、「平和ボケした」日本人に「国家防衛意識を高める」ことにあったと思う。

当時の民主党の野田佳彦政権はまんまとその術数にはまり、その年の9月11日、魚釣島など3島を国が買い上げ「国有化」した。これに対し中国は、両国間の領土問題「棚上げ」という暗黙の了解を一方的に破り、実効支配を強化したと非難。それまでは控えていた中国公船を尖閣領海に入れ、中国全土でデモを展開する激しい報復に出た。

それから10年。尖閣諸島では昨年来、右派活動家が雇った漁船が領海で「操業」する挑発をし、中国海警船が活動家の上陸を阻止しようと追いかけ回す。石原氏が死去した1日には、尖閣の実効支配強化を主張する沖縄県石垣市長が、同様の主張をする東海大教授とともに魚釣島の「海域調査」という挑発行動を展開した。

思い出すのは、石原が10年前の演説で「日本の漁船が行くようになったら、外国の船が追っ払える」という発言だ。しかし石原の希望とは逆に、実際は「追っ払える」どころか「追いかけ回されている」のが実情。海洋での日中実力差が投影されている。

石原を弔問した岸田文雄首相は「存在の大きさを痛感」と述べ、ジャーナリストの田原総一郎氏は「ぶれない政治家」(「朝日」2月1日)と持ち上げた。だが尖閣問題では、「ぶれない」どころか実際は「ブレブレ」だった。

「都有化発言」の3年前、母校の一橋大学時代の同級生だった中国人研究者、凌星光氏との対談で石原は「『主権棚上げ、共同開発』の意見に賛成する。~中略~主権争いで戦争になるようなことは避けなくてはならない」(日中科学技術文化センター会報「きずな」2009年夏号)と述べていたのだ。

歴史に「もし」は禁句とされるが、石原挑発がなければ尖閣問題が日中間に刺さった「抜けないトゲ」にはならなかっただろう。国交正常化50周年の今年、「反中翼賛世論」が日本を覆う現状を振り返ると、日中関係を損なった石原挑発は「万死に値する」。(了)

オットット爺や  プロフィール
1948年生まれ。通信社特派員として香港、モスクワ、台北などで報道。退職後は客員論説委員として国際政治を論じる一方、都内某大学で客員教授を務める。

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