2010年11月-中国人と日本人

 「あれはヤクザがやっていることと 同じ。こんな中国に行くつもりはな い。向こうから頼まれたって行かな い」と、早口でまくし立てるのは東京 都知事の石原慎太郎。尖閣諸島で起き た中国漁船と巡視船の衝突事件で、北 京政府が閣僚級以上の交流停止を打ち 出したのを受けて、訪中の中止を発表したときのひとこま。スキ嫌いはとも かく、この人の反射神経には舌を巻く。乱暴だがズバリ本音を吐いてこち らの情に訴えかける才能は、ほんとう にテレビ向きだと思う。大阪知事の橋下徹もそうだ。

  日本の大使を深夜に呼び出して抗議 する非礼に始まり、閣僚級交流の停止 や人気アイドルグループ「SMAP」 の講演中止など、中国の対抗措置はエ スカレートする一方。日本向けレア アース(希土類)の輸出制限や、日本人4人が「軍事管理区域侵入」容疑で 拘留されたことが明らかになると、リ ベラルで知られる全国紙のコラム氏ま で「法治ならぬ人治の国、しかも一党 独裁で思うがままだから始末が悪い。 下手に譲れば増長する。国際社会の常 識が通じにくい『見習い大国』に経済の多くを頼り、国の生命線を握られる 危うさを思う」と、怒りをぶちまけ た。いまや日本中のメディアが、政府の弱腰外交を批判し「領土ナショナリ ズム」をあおり立てる。爺やはそっち のほうがこわい。

 大学で同僚の教員も「中国ってのは、こういう時は一丸になるんです ねえ」。ここは少し誤解がある。「一 丸」とは、上から下まであらゆる場 所で、各界が意思を一つにして行動 する、ことを言うのだろう。中国は そうではない。共産党中央と政府が、 あらゆる国家機関を動員して、体系的に「対日制裁」を発動しているのであって、一丸ではない。2005 年の靖国神社の時と比べると、中国 民衆の反応は今回比較的冷静だった。 豊かになり中産階級が増えれば、国 民の意識も多元化する。華人はもともと国家意識が薄い。KLにいればわかるだろう。ナショナリズムで引き締めなければ、一党独裁は維持で きないのだ。

  領土ナショナリズムほどやっかいなしろものはない。「正義」と「善」 は常にこちら側にあり、「非」は相手 側にある固定観念の虜。一切の妥協を許さず、政府が譲歩すれば批判の矛先は政府に向きさらに過激な対応を求める。こうなると「負の連鎖」 から抜け出せなくなり、官民挙げて「いつかきた道」をたどりかねない。 「KY」に弱い日本人は、こぞって同 じ方向を向きがちだ。特に心配なのは「屈辱感」と被害者意識を募らせ るこちら側のナショナリズムである。 石原サンや橋下サンの切れ味がよいコメントを聞いて「溜飲を下げた」人は要注意だ。かなり領土ナショナ リズムの虜になっている。   (了)

オットット爺や

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