2010年6月-「アラなんとか」考現学

 

 この春の就職はとても厳しい。3月末に卒業する大学4年生の就職内定率(2月末現在) は、全国平均で約70%。東京近郊のある中堅大学の場合「62%台です。去年と比べると28ポイント減」。就職担当者が渋い顔で明かしてくれた。数字だけを見れば、5人の学生のうち2人が無職のままという計算。いま日本で就職するのはほんとに大変。そこの、お子さんを日本人学校に通わせている方、東京本社の帰国命令なんか無視してずっと現地にいてください。日本に戻っても親子ともろくなことはありませんよ。暴論だが本音。

 いったい学生たちはどんな企業に就職したいのか。就職先ランキングは時代の鏡でもある。そこで、就職専門誌の過去40年の人気ランキングを調べてみた。最近定年を迎えた「アラカン(Around還暦)」が学生の頃(1970年)、1位、2位は日航と日本IBM。トップ10のうち5社が大商社だ。高度成長の勢いに乗って「国際化するニッポン」。アジアにヨーロッパに「海外雄飛する青年」のさっそうとした姿が目に浮かぶ。

 いま企業の部長クラスで威張っている「アラフィフ」の時代は、なんといっても金融人気が抜群だった。85年のトップはサントリーだが、10社のうち4社が大手銀行と保険。この年9月、ニューヨークのプラザ・ホテルで開かれた先進5ヵ国蔵相・中央銀行総裁会議で、円高が容認され、1ドル=250円台が翌年150円台まで上がった。バブル経済が始まり、「失われた20年」は、この「プラザ合意」が運命付けた。

 オット紙幅が足りないぞ。何の変哲もない薄茶色の4階建て集合住宅。青空のまぶしい日曜の朝、ベランダには洗ったばかりの衣類、一階には住人たちの自転車が整然と並ぶ。幸せを絵に描いたような風景。しかし、その左に隣接する同じような4階建て集合住宅との間には「見えない線」が引かれている。

 手前は経営破綻した航空会社の社宅。過去40年人気企業ランキングでトップ10に入り続けた。そして向こう側は、大手証券系の不動産会社が建てたマンション。色も背丈もそろえ、その違いはちょっと目には区別がつかない。香港からこの街に移り住んだ20年前、航空会社の社宅は垂涎の的だった。3LDKで家賃はなんと1万円弱。広い中庭にはテニスコートが数面。ゆったり贅沢な砂場で、スッチー上がりのきれいなママが幼児と遊ぶ。羽田の発着航路に当たるため、パイロットが社宅上空で砂場の子供に手を振っていた。ウソです。

 そんなハッピーな光景も長続きしない。テニスコートや駐車場を売りに出したのは2、3年前から。膨れるばかりの負債に耐え切れず、切り売りしていたのだ。「盛者必衰の理」。ウン千万円をつぎ込んで隣の高級マンションを買ったそこの「アラフォー」、見えない線の先にある自分の将来に思い致せ。(了)

オットット爺や

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