2013年4月-メディアが作る社畜

「入社10年ぐらいまでは好きなことができるわけがない。徒弟時代なんだから」。靴屋の親方の言葉じゃない。ある全国メディアの編集局長が「現場の記者は何を面白がればいいと思うか?」と質問した若い記者への回答。「徒弟って何?」って聞くそこの人、辞書を引きなさい!「西洋中世の手工業で、親方の下で見習い中の者」「日本では丁稚(でっち)、小僧とも呼んだ」とある。そうか大手メディアの記者って丁稚だったんだ。けっこう偉そうなヤツが多いと思ったけど…。「報道のいま、本音で議論」という見出しのタブロイド「新聞」。労働組合が作ったらしいが、編集局長発言に、記者側から何の反論も出なかったところが興味深い。そうか、みんなメディアが徒弟制度であること認めたわけね。徒弟は親方の作法を見習い、マネしながら技術を身につけ一人前になる。物作りの世界なら分かるけど、メディアも「シャチク(社畜)」つくってたんだ。

サクラが一斉に開花し入学、入社の季節が巡る。かくいう爺やも40数年前は「フレッシュマン」だった。ちょっと皮肉れていたけど。マスメディアを選んだ理由はいくつかある。朝定時に出社しなくてよさそうだし、「権力の監視」という建前もカッコいい。監視する権力は、国家もあれば地方もある。民間だって社会的責任を果たさず道義にもとる行為があれば指弾する。メディアは常に「正義の味方」。でも組織に身を置けば、その正義とは「内面化」されていない、きれい事に過ぎないことがすぐ分かる。

なにより身内に甘い。今はないと信じたいが、身内が起こした交通事故の発表のもみ消しは結構あった。メディアと警察とのもたれ合い。マスメディアの記者のみが入れる記者クラブ。国鉄(JRの前身)の優待パスに、役所からの盆暮れの付け届け。温泉に泊まりがけの接待もあった。権力との癒着である。

(写真は、ブログ「午後のVIP」から)

駆け出しのころは、支局長やデスクとよくぶつかった。原稿の表現をめぐることもあったが、メディアの在り方をめぐる議論が多かったと思う。ムキになるこちらに、先輩記者から「青いなあ、お前も」とたしなめられるのだった。しかし冒頭に紹介した編集局長の言葉を信じれば、「徒弟なんだから、親方や先輩の作法をまねろ」ということにならないか。

論理の問題ではない。戦争の後押し役を果たしたマスメディアは、戦後も権力と二人三脚で「国策」の推進役になった。東日本大震災と福島原発事故からその教訓を学んだはずなのに、安倍政権誕生で株価が上がれば、「のど元過ぎた熱さ」など忘れる。この新聞の最後に出てくる若い記者の発言を紹介する。「僕はいますごく楽しく仕事ができています。職場のコミュニケーションがうまくいっているからだと思います」。

ああ地上の楽園だ!(了)

オットット爺や

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