2014年8月-情緒から理性へ

 教室を埋め尽くした約200名の女子大生の6、7割が、すこしざわめきながら手を挙げた。東京の有名女子大で「日中関係」について話をするに先立ち「中国に好くない印象をもっている学生、手を挙げてみて」と聞いてみたのである。「じゃあ、好い印象をもっている学生は?」と問うと、遠慮がちに手を挙げたのは2、3人…。

 学生の反応はオーバーではない。日本人の対中感情の平均値と言ってよいだろう。電車の吊り広告は毎週、中国と韓国を悪し様に非難する雑誌の見出しが踊る。「中国はなぜ平気で嘘をつくのか」(月刊「B」)「『中国・韓国』反日連合の弱点」(週刊「S」)。書店の政治・経済コーナーでも「嫌中本」「嫌韓本」が平積み。「嫌い」を通り越し、敵視と言って誇張ではない。キタナイ言葉の羅列は論理ではなく情緒の世界。毎日こんなメディアに接していれば「好くない印象」が、刷り込まれて不思議はない。

日中学生交流連盟の学生。演壇から撮影。

日中学生交流連盟の学生。演壇から撮影。

 そんな折、日本と中国の大学生交流団体がつくる「日中学生交流連盟」と桜美林大学北東アジア総合研究所が共催する集まりで講演した。連盟は9つの学生交流団体が「日中の交流活動に関わる学生団体の連携を強め、日本と中国のパイプをより太いものにするため」と、2012年10月設立した。設立時期を思い起こして欲しい。野田政権が尖閣諸島(中国名 釣魚島)を国有化した直後、中国各地でデモが燃えさかった時期である。活動は、この勉強会をはじめ、日中学生によるディベートやホームステイ、語学交流やビジネスコンテストなど多岐にわたる。

 会場の桜美林大学四谷キャンパスには、平日の夜7時にもかかわらず、約30人の学生が集まった。テーマは、台湾大学生が立法院(国会)を占拠した事件。事件経過と背景、今後の中台関係に与える影響になどについて約一時間話した。学生の半数は中国、台湾、香港からの留学生。学生に混じって、早稲田大元総長や桜美林大の教授、元外交官や現職自衛官の顔も見える。

 台湾問題と中台関係というどちらかと言えばマイナーな問題に彼らが関心を寄せるのはなぜか。質問内容を分析するとこうなる。(1)中台経済関係が深まるほど、台湾では中台統一ではなく、台湾共同体意識が強まる理由は何か(2)違法な占拠なのに世論の支持が集まったのは、間接民主制が機能していないのでは―などであった。グローバル化によって国境が低くなる世界で、人々の意識はどう変化するのか。政党政治が、議員バッジ製造マシンと化した日本も直面する普遍性のあるテーマだ。情緒から理性へ。大学生の知は、ちゃんと生きている。(了)

オットット爺や

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