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- 2020年1月-衰退国?いったいどこの国
大学図書館の広いホールで、ブツブツ言いながら歩く若者たちの異様な光景が目に入った。見れば、両手に広げた本を音読しながら歩いている。チラッとのぞくと、教科書らしい本には、赤や黄色のマーカーがびっしり。中国山東省日照の曲阜師範大学でのことである。
聞けば大学院の試験のために暗記をしているのだという。ソファに座って黙読する学生、窓の外の景色を見ながら音読する若者とさまざま。思わず、暗記のために音読した中・高校時代に引き戻された。この大学の大学院進学率は中国ナンバーワンなのだという。曲阜といえば孔子の故郷、学問・教育に熱心な土地柄のなせる業なのだろうか。
本題に入る。ハイテク技術競争が激化し、世界では高度な技術・知識の証明として修士・博士号取得者が増えている。一方、日本では博士号取得者が16年に1万5000人と10年間で16%も減少したという。欧米先進国の米、独、英、仏などでは軒並み二ケタ増、中国ではなんと5割も急増した。
その理由は、欧米や中国では高学位ほど年収が伸びるのに対し、日本では博士号を取得しても学部卒業生との差は大きくない。博士号をとっても、大学や研究所の就職や年収が不安定なことがその理由だ。一方、中国では自国の大学院生育成に加え、年間5000人超が訪米し、博士号を取得している。
「沈まない太陽」とおだてられ、バブル経済に浮かれたニッポンは、いま着実に衰退国に向かっている。衰退の兆候は他にもある。日本経済新聞は「安いニッポン」という連載記事(19年12月10日)で、日本ではモノ・サービスなどの価格の安さが鮮明になり、「安いニッポンは少しずつ貧しくなっている日本の現実」と書いた。
それによると、世界6都市にあるディズニーランドの入場券は日本が最安値で、本場米カリフォルニア州の約半額。「100円ショップ」の店頭価格も、中国では「メイドインチャイナ」製品ですら150円超だという。来日外国人数は伸びているが、アジア新興国にとって日本旅行の最大の誘因は、日本の物価安にある。「おもてなし」などではない。
物価安の理由は賃金の低さにある。1997年の実質賃金を100とすると、2018年の日本では90.1で10ポイント弱も減少している。この間、米国は116、英国127.2と、ちゃんと増えている。さらに少子高齢化が進み、労働不足も深刻。ことしから外国人の受け入れを拡大したが、長時間労働に加えて低賃金となれば、誰が好き好んで日本を「出稼ぎ先」に選ぶだろうか。
欧米メディアが最近よく使う「ジャパニフィケーション」(日本化)とは、「衰退国」を意味する新語だ。いつまでも「先進国」の虚構にしがみついているわけにはいかない。(了)
オットット爺や
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