マレーシア最新芸術事情 2020年10月-Look East Gone West

マレーシア最新芸術事情


アティカ  プロフィール
あっという間に在マ歴17年。外見も中身もだいぶマレーシア化してきている自分に驚かされている…

Look East Gone West

 この数年、マレーシア、シンガポール、インドネシアの現代アーティスト達が、繁にアジアやヨーロッパの芸術祭に招待されるようになりました。なかでも特に人気なのがシンガポールのホー・ツーネンとホー・ルイアン(ちなみにこの2人、よく間違えられますが兄弟ではありません)、インドネシアのイルワン・アーメット&ティタ・サリナ夫妻、そしてマレーシアのマーク・テです。


 おそらく彼らに共通して言えることは、作品のなかで取り上げている題材が、歴史、民族、政治などの問題を軸としている点でしょう。この成長著しい東南アジア諸国では、イギリスやオランダの植民地時代を経て、その名残りを引きずりながらもある程度の時が流れ、新たな歴史が築かれた。それぞれの国が、あるいはこの地域が発展していく過程で起こった出来事を、今の世代のアーティスト達が彼らの視点から作品として表現している。それが海外の人々にはとても新鮮に映るのかもしれません。


 それらアーティストの一人であり、最も若いホー・ルイアンの個展が、KLのA+WORKS of ARTにて開催されます。『Look East Gone West』というこの展覧会のタイトルは、1985年に当時のサッチャー英首相がマレーシアを訪れた際に、その数年前から「ルックイースト」政策を掲げていた当時のマハティール首相に対し、「時に東を見たり東へ旅をしても良いでしょうけれど、東を見過ぎて東へとどんどん突き進んで行くと、いつも最後には西にたどり着くのですよ!」と発言したものに端を発しているそう。

 1997年、98年のアジア経済危機を取り上げた『Asia the Unmiraculous』という彼のレクチャー・パフォーマンスのビデオもその展示作品の一つ。なぜアジア経済危機なのかとご本人に聞いてみたところ、「その頃まだ自分はこどもだったけれど、それでも不況を肌で感じることができたんだ。だって、かなりの頻度で学校から自宅のある団地に帰ると救急車やパトカーが停まっててね、要はそれぐらい自殺する人が多かったってことなんだけど。だからこどもながらに、どうしてこんなことになってしまったんだろうって考えるようになったんだ」。彼に対してクールな本の虫的なイメージを勝手に抱いていた私は、この作品が彼の実体験に基づいているものだと知り、かなり驚いたのでした。

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