マレーシア最新芸術事情 2020年3月-検閲、そしてその後

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検閲、そしてその後

2月、マレーシア芸術界は、Ahmad FuadOsman(アハマッド・フアッド・オスマン)に関する話題でもちきりでした。1月号でご紹介した、国立美術館で開催中の彼の回顧展、「AT THE END OF THE DAY EVEN ART IS NOT IMPORTANT 1990-2019」。10月に開幕したこの展覧会、大変好評を博していたことから、国立美術館からの要請で会期が2月28日までと1 ヵ月延長されていました。
ところが2月4日、既に3 ヵ月もの間特に問題もなく開催されていたにもかかわらず、展示中の4作品が美術館によって撤去されてしまいました。その後美術館側とやり取りを続けたフアッドですが、2月10日に検閲理由の説明と該当作品の再展示を求めた公開文書を本人のインスタグラムやフェイスブックに投稿します。
国立美術館の展示作品に対する検閲は、今回が初めてではありません。この数年同館によって撤去されたり、一時的に隠されたりした作品は複数あり、美術界において不信感が高まっていたのですが、この展覧会は、前政権の時には企画時点で外れていたであろう作品も多く展示されており、「新しいマレーシア」を感じさせてくれるものでもありました。それ故に、この検閲問題が発生したことで、「やっぱり新しくなっていなかった=政府の根本的なところは変わっていない」という日々の国民のつぶやきを象徴するような事例にもなってしまったのです。これを受け、アーティスト達の間で作品を検閲したとされる諮問委員会に宛てた抗議文書への署名を求める動きがおこります。2月10日に公表されたその抗議文は、最終的には396名の内外の芸術関係者の署名を集めました。その後美術館側も同じ日に声明文を発表しますが、その内容は漠然としていてフアッドの要求を満たすものではないとして、更に不満が高まります。しかし突如その翌日、観光芸術文化省の副大臣が、4作品すべての再展示とフアッドに対する謝罪を美術館側に求める文書を発表。そしてさらには同展に作品を貸し出している収集家全員を含む55名の収集家が、「作品を再展示しなければ今後同館には一切作品を貸し出さないという」という内容の声明文を発表しました。その他ここには書ききれないほどたくさんのことがこの2週間で起こりましたが、最終的には作品は全て元の状態に戻されました。全てが落ち着いた後、偶然フアッドに会うと、「いや~、本当に疲れたよ。」と苦笑い。いろいろな意味で、本当におめでとう!と硬く握手を交わしたのでした。

アティカ

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