2012年3月-マレーシア最新芸術事情

表現の自由なるか!?-映画検閲局が新方針を発表―   

 それは昨年11月のこと、突如マレーシア内務省が「2012年1月以降はあらゆる映像作品も検閲を通さなくてよい」との新方針を発表。それによれば、検閲制度自体がなくなるわけではないが、今後は、制作者側にそのタスクが課せられるとのこと。

  そもそも、皆様お気づきのように、マレーシアでは検閲制度が用いられ、映画、テレビドラマ、テレビコマーシャルと、すべての映像作品は内務省のフィルム検閲局にて検閲を受けることが義務付けられてきました。カットされるシーンは、主に暴力と性的描写ですが、その他その内容が政府批判とみなされたり、国内の人種問題に触れたりしている作品などは、シーンの一部カットを求められるだけでなく、時に上映禁止とされてしまうこともあります。例えば故ヤスミン・アーマッド監督の代表作「セペッ」(”Sepet“、邦題『細い
目』)のワンシーン。主人公のマレー系の女の子が、家族との会話のなかで、「マレーの子は5Aの成績でも大学に行けるのに、チャイニーズの子は8Aとっても大学には行けない」といった内容の発言をするところがあり、ブミプトラ制度を批判しているとしてカットを求められました。

 海外の作品ももちろん検閲対象となっています。スティーブン・スピルバーグの「シンドラーのリスト」などは、検閲局がカットを求めた箇所が作品には必要不可欠なシーンであるとして、スピルバーグ監督自身がマレーシアでの上映を拒否したとの話も聞いたことがあります。また昨年にはVCD、DVD販売を目的とした日本のアニメ作品なども、その性的描写が理由で上映禁止となっていたそうです。

 今回の政府の新方針により、細かいところをいちいち役人がチェックすることがなくなり、作り手の意思をより
反映させられるようになるのでは? と期待の声が高まる一方、徐々にそのマイナス面も見えてきました。例えば、ガイドラインをどうするのか。また、ガイドラインがあったとしても、個人の判断にゆだねられる部分はどうするのか(この程度のキスシーンならOKだがここまでくるとダメ、といった線引きは個人の受け取り方によって違ってくる)。そして万が一自主検閲が十分に行われていないと判断された場合、そのプロデューサーや監督に対する罰則はどのようになるのか、などなど。

 ということで、まだまだはっきりしないこの検閲局の新方針。結局1月末現在、いまだ施行されていません。いつになったら始まるのか。始まったら、私たちが日ごろ目にするものにどれほどの違いが現れてくるのか。今後の動きを見守っていきたいと思います。

アティカ

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