2016年10月-マレーシア最新芸術事情

マレーシアにおける文化的権利とは?

7月末のある日、クアラルンプール中心部に年代から建っていたある有名な彫刻が突然取り壊されました。丸いベースに高くそびえる二つの三角形から成るその作品は“Puncak Purnama”(Lunar Peaks /月面の山)というタイトルで、マレーシアの人間国宝的存在だったアーティスト、故ダトゥ・サイド・アーマッド・ジャマル氏によって、1986年に現在のメイバンクの前身により委託されて作られ、その年の11月にクアラルンプール市役所(DBKL)に手渡されたものでした。その後1996年に、DBKLがサイド・アーマッド氏の許可なくその彫刻の素材をセラミックグラスからステンレスに変えてしまい、同氏に訴えられ、敗訴したという顛末は美術界でも有名な話でした。

ところがDBKLはここにきて、その彫刻の外側の素材を変えるどころか、いきなりクレーン車で作品の取り壊しにかかりました。そのニュースはたちまち芸術界に広まり、国立美術館(National Visual Art Gallery)の敷地内にはそのがれきが集められ、同美術館のチェアマンはもとより、アーティスト達も続々と集まりました。なかには、そのがれきの山を亡骸と見立て、葬儀のパフォーマンスをするアーティストも。普通ならば、たとえ理由がどうであれ政府機関は同調するのが常だったのが、今回ばかりは国立美術館がDBKLに抗議の意を示し、アーティスト側に立つ姿勢を見せたのは、彼らが国立の美術館の立ち位置としてそうすべきと考えたのか、あるいはやはり、サイド・アーマッド氏が同館の館長を長年務められ、皆に愛されてきた証なのかと、興味深くことの成り行きを見守っていました。

この一連の出来事に対し、DBKLを司る連邦区大臣のダトゥ・スリ・トゥンク・アドナン氏は、「修理不可能で目障りだったから」と一掃。更に多くの人々からの怒りを買うこととなりました。
これに対し、マレーシア人のアーティスト達は、DBKLに作品の修復を求める署名活動を開始し、8月16日にはKL市内で抗議デモを実施。もちろん抗議のプラカードや横断幕を掲げてはいたものの、詩の朗読、楽器の演奏、パフォーマンスを盛り込んだその平和的なデモで彼らは、国連の「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」に署名するようDBKLに促しました。

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