2016年8月-マレーシア最新芸術事情

古きよき時代に学ぶ

ラマダン真っ最中の6月25日、TTDIにあるファイブアーツセンターにて、作曲家サイーダ・ラスタムによる講演会が開催されました。「5 Awesome Malayan Songs」と題されたその講演会は、独立前のマラヤ時代そしてマレーシア初期の古きよき時代に遡り、当時の国の状況や情勢を振り返りつつ、ラテンの影響を強く受けたマレー音楽から、オーケストラ楽曲、愛国歌まで、その時代の影響を受けた、あるいは影響を与えたとされる異なったジャンルの5曲を紹介していくものでした。とてもカジュアルな雰囲気の会場には、専門家から親子連れまでさまざまな層の人が集まり、興味深くサイダ氏の話に聞き入るばかりか、立ち上がって全員で合唱することも。かなり今どきな感じの若い人たちが、その音楽と共に生きた世代と一緒になって歌うという光景は、ちょっと他では目にすることのできない貴重なものでした。
取り上げられた5曲のなかでは、のちにスディールマンが歌ったバージョンが有名になったマレーシアの独立を讃える愛国歌「Tanggal 31 Ogos」が、皆さんが最も耳にする機会の多い曲ではないでしょうか。毎年8月31日の独立記念日近くになると、ラジオやテレビなどで頻繁に流れます。
スディールマンといえば、ハリラヤの歌でも有名です。「♪オーオーオー、バーリッカンポーン」というフレーズはきっと皆さんもどこかでお聞きになったことがあるはずです。80年代から90年代初めまで活躍した彼は、1992年2月に37歳の若さでこの世を去りましたが、今でも愛され続けている歌手です。チョウキットの街を10万人の観衆が埋め尽くした86年のコンサートは、その写真を見るだけでも圧巻の一言。マレーシア音楽界の伝説として語り継がれています。
かつて、音楽が作り上げることができた一般市民の中の連帯感というものを、時代背景と共に大いに学び、楽しむことができたこの講演会。様々な人種そしてバックグラウンドの、年齢の異なった参加者たちと共に古きよき時代の歌を歌うことで、歴史を身近に受け止めると同時に、この不安定な時代にもまだ光があると感じることができ、私とそして一緒に参加した12歳の長男にとって、期待以上に大きく心に響くものとなったのでした。

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